著者
若菜 宣明 中林 敦代 本間 和宏 大松 孝樹 平井 香織 田中 越郎
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.44-48, 2007
参考文献数
19

ビルベリーは夜間視力を改善するといわれている。しかしいくつかの臨床試験が試みられているものの,はっきりした結果は出ていない。ブルーベリーはビルベリーと近縁の植物で,日本ではビルベリーとしばしば混同されている。従って多くの日本人はブルーベリーが視力改善に効果があると思っているが,ブルーベリーの眼機能に関する研究はほとんどなされていない。本研究ではブルーベリーが眼機能を改善するか否かを調べた。7人の健康成人に10gの乾燥ブルーベリーを摂取させ,4時間後に眼機能を評価した。暗順応時間,視野,流涙量(シルマー試験で評価),まばたき回数,自覚所見には改善は見られなかった。また,10人の健康成人に毎朝7gの乾燥ブルーベリーを21日間摂取させたところ,やはり暗順応時間,視野,流涙量,まはたき回数,自覚所見には改善は見られなかった。すなわち,今回の17人の被検者で調べた限りでは,一般的摂取量のブルーベリーでは明らかな眼機能改善効果は見い出せなかった。
著者
吉益 光一
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.130-141, 2020-07-30 (Released:2021-03-02)
参考文献数
70

注意欠如多動性障害(ADHD)は児童・思春期だけではなく,成人期においても職場での問題などから,大きな社会的関心が寄せられるようになっており,自閉症と並んで児童期から成人期に至る発達障害の双璧をなしている。病因は極めて多彩かつ複雑であり,遺伝要因,自然環境要因,心理社会的環境要因の全てが関与する先天性の,ないしは幼児期早期に基本的病像が確立される多因子疾患と捉えることができるが,要因相互間の関連性もこの疾患の臨床像の正確な把握を困難にしている。さらに最近の研究により,精神疾患,身体疾患ともに多彩な併存障害を有することが明らかになっており,特に精神科領域においては,併存障害が受診のきっかけとなることもある。さらに忘れてはならないのが,ADHDという病態像をめぐる歴史的な認識の変遷であり,多分に時代ごとの社会的関心や価値基準の影響を受ける病態像において,ADHDという単一類型(カテゴリー)に拘泥して,遺伝要因や環境化学物質を含む種々の生物学的要因を探索しても方法論的に限界があることにも留意する必要がある。本稿ではこのような点を踏まえつつ,主として遺伝要因と環境要因の関係性の視点から,ADHDの疫学と病態について論じた。
著者
井奈波 良一
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.214-217, 2012-01-31
被引用文献数
1

日本の花火は,多くの研究開発の結果,世界で最も精巧で華麗なものとして全世界から絶賛されている。日本の花火大会は,江戸時代に全国的な飢饉と疫病(コレラ)の流行による多数の死者の慰霊と悪疫退散を願い,花火を盛大に打ち揚げたことにはじまったといわれている。花火の心理学的研究として,花火に対する印象評価語(感動,力強さ,爽快感,美的感覚)と花火の構成要素(色,光,形,音)が個別に関連を持っているかを探るために実験場面を設定した印象評価実験が行われている。また,花火大会はストレス解消の場としての効用も考えられている。花火による健康障害には,熱傷や創傷の他に,花火の煙による気管支喘息,好酸性肺炎が報告されている。花火師の職業病に関する研究は,少数の花火師を対象にした報告があるにすぎない。その報告によれば,主な自覚症状の有訴率は,難聴50.0%,腰痛40.0%,耳鳴り30.0%,視力低下30.0%であった。症状は10年から20年位で出現していた。また,花火師が実際に受けている音圧の平均値は128.9dBと推定された。打ち揚げ地点から15m離れた地点での粉じんの質量濃度(mg/m^3)の平均値は0.992であり,日常の43.6〜47.2倍であった。今後,花火師のメンタルヘルスや夏期に特に重要となる熱中症予防の観点からの取り組みが期待される。
著者
水野 恵理子 坂井 郁恵 高田谷 久美子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.223-229, 2022-07-25 (Released:2022-10-17)
参考文献数
17

本研究の目的は,統合失調症者にとって一般就労がどのような意味をもっているのかを明らかにすることである。対象は,一般就労している統合失調症者12名とし,個別の半構成的面接を行い,逐語録を内容分析した。分析の結果,統合失調症をもつ就労者である自分との対峙,一社会人になることへの促しの2つのカテゴリを抽出した。一般就労は,病気を抱える就労者である自分と向き合い,誇りの再獲得をもたらすものであった。
著者
大釜 恵 柳 栄治 橘 深恵 渡部 節子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.414-419, 2020-01-31 (Released:2020-10-06)
参考文献数
7

新型インフルエンザなどが発生した場合には,病原体曝露予防のためにつなぎ式感染防護服(以下,防護服)の着用が必要となる。横須賀市立市民病院では,防護服は2時間着用を目安にしているが,30分間の訓練時においても使用者からは防護服着用による暑さや口喝などの不快感の訴えが多く聞かれる。このため,実際に感染症患者が搬送されて2時間使用した場合には注意力低下や業務上のエラーを起こす可能性がある。本研究では,防護服使用者の不快感を最小限にする目的で,防護服2時間着用時の防護服内温度と着用感を明らかにするとともに,対応策を検討した。訓練時に各病棟から選出された感染担当看護師10名を5名ずつ2群に分け,対照群にはインナーの上に防護服を着用させ,介入群にはインナーの上に保冷剤を装着したベスト(以下クールベスト)を着用させ,その上に防護服を着用させた。着用10,20,30,40,50,60,120分後に着用感を確認するとともに,対照群・介入群から無作為に選出した各2名について防護服内の温度を測定した。着用2時間後の防護服内の温度は,着用直後に比較して,対照群は平均でプラス2.5℃,介入群はプラス1.4℃であった。防護服の着用感に関して,対照群は30分後に全員が「暑くてつらい」,120分後に「暑くて業務に集中できない」「息苦しい」などの回答をした。一方,介入群は,40分後まで意見はなく,50分後に3名が「暑くてつらい」と回答した。以上のことから,クールベストの着用は防護服内の温度上昇を防ぐこととなり,防護服着用による暑さなどの不快感の軽減に繋がることが示唆された。
著者
野尻 雅美
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.99-102, 2015-07-31 (Released:2017-12-28)

看取りのない高齢者の孤独死は避けたい死と考えられてきました。ところが,個の自立している(QOLの高い)高齢者の死は「ひとり死」であり,看取りの有無に関係なく,「満足死」,「幸せ死」,「安寧死」です。一方,個の自立してない(QOLの低い)高齢者の死は「一人死」であり,看取りの有無に関係なく「孤独死」,「孤立死」です。これより単身高齢者には定期的な見守りとともに,自立心向上への支援が必要です。
著者
佐久間 夕美子 友藤 裕美 宮内 清子 佐藤 千史
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.13-19, 2008-04-30

本研究の目的は,コンピュータ操作演習開始時のチョコレートの摂取による演習終了時の疲労の影響を明らかにすることである。調査は3時間のパソコンを用いた情報処理演習で実施した。対象者は看護学生45名とし,演習開始時,無作為にチョコレート群・黒砂糖菓子群・コントロール群に分けられた。全ての対象者は,演習開始時に現在の疲労の自覚症状を尋ねる調査用紙に回答した。その後,対象者はチョコレート,または黒砂糖菓子を摂取し,コントロール群は何も摂取せずに演習を開始した。演習終了時,全ての対象者が演習開始時と同じ内容の調査用紙に回答した。演習開始時の疲労感は,チョコレート群で有意に低かった(p<0.05)。コンピュータ演習開始時・終了時の疲労を比較した結果,チョコレート群は集中力が有意に維持されていた(p<0.05)。さらに,演習的8時間以内に甘いものを摂取しなかった者でも,チョコレート群ではイライラ,精神的な疲労が抑制されていた(p<0.05)。以上の結果から,作業前のチョコレート摂取は集中力の維持や精神を安定させる効果をもつ可能性が示唆された。
著者
佐久間 夕美子 友藤 裕美 宮内 清子 佐藤 千史
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.13-19, 2008-04-30 (Released:2017-12-28)
参考文献数
10

本研究の目的は,コンピュータ操作演習開始時のチョコレートの摂取による演習終了時の疲労の影響を明らかにすることである。調査は3時間のパソコンを用いた情報処理演習で実施した。対象者は看護学生45名とし,演習開始時,無作為にチョコレート群・黒砂糖菓子群・コントロール群に分けられた。全ての対象者は,演習開始時に現在の疲労の自覚症状を尋ねる調査用紙に回答した。その後,対象者はチョコレート,または黒砂糖菓子を摂取し,コントロール群は何も摂取せずに演習を開始した。演習終了時,全ての対象者が演習開始時と同じ内容の調査用紙に回答した。演習開始時の疲労感は,チョコレート群で有意に低かった(p<0.05)。コンピュータ演習開始時・終了時の疲労を比較した結果,チョコレート群は集中力が有意に維持されていた(p<0.05)。さらに,演習的8時間以内に甘いものを摂取しなかった者でも,チョコレート群ではイライラ,精神的な疲労が抑制されていた(p<0.05)。以上の結果から,作業前のチョコレート摂取は集中力の維持や精神を安定させる効果をもつ可能性が示唆された。
著者
塩見 直子 鈴木 英子 松谷 弘子 加古 幸子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.205-217, 2021-07-27 (Released:2021-10-16)
参考文献数
42

大学病院の看護師のバーンアウト予防を意図し,職業的アイデンティティとバーンアウトの関連および職業的アイデンティティの高い者の特徴を明らかにした。調査協力の得られた関東圏の大学病院4施設に勤務する看護師長,助産師,非常勤看護師を除く全看護師2926名を対象として,Maslach Burnout Inventory Human Service Survey (MBI-HSS),看護師の職業的アイデンティティ尺度,短縮版3次元組織コミットメント尺度を使用した無記名自記式質問紙調査を実施した。有効な回答を寄せた看護師1452名を解析の対象とした。解析対象者の年齢(平均値±標準偏差,以下同じ)は32.53±9.56歳,臨床経験年数は9.49±8.36年であった。MBI-HSSの総合得点は,11.93±2.68点,職業的アイデンティティの合計点は61.92±8.40点であった。重回帰分析の結果,「職業的アイデンティティ」とMBI-HSSの総合得点との関連が認められ(β=-0.257, p<0.01),職業的アイデンティティが高い者は,バーンアウトしにくいことが明らかになった。職業的アイデンティティが高い者は,①年齢,臨床経験年数が高く,配偶者や子どもがあり,職位が副師長・主任であることが多く,②「病院はキャリアを支援してくれる」,「現在の給与に満足している」,「休みの希望が通りやすい」など組織を肯定的に評価する割合が高く,③「情動的コミットメント」,「継続的コミットメント」,「規範的コミットメント」の点数が高く,④「組織は個人の価値観を理解してくれない」,「今の職場を辞めたい」,「今の仕事を辞めたい」と回答する割合が少なかった。これらの職業的アイデンティティの高い者の特徴を参考に人材を育成していくことは,看護師のバーンアウト予防につながると考える。
著者
岩佐 由美 藤井 千枝子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.150-158, 2022-07-25 (Released:2022-10-17)
参考文献数
20

高齢患者の安全な服薬に示唆を得るため,パーキンソン病患者会会員436人に質問紙調査を行った。248人の分析対象者(有効回答率56.9%)の平均年齢は72.2歳だった。173人(69.8%)が服薬の「自己調整なし」,75人(30.2%)が「自己調整あり」と回答した。両群を比較した結果,「自己調整あり」の平均年齢と平均発症年齢は低く,平均罹患期間は長かった。薬の平均種類数と残薬の平均日数は「自己調整あり」において多く,ともに有意差があった(p<0.05)。二項ロジスティック回帰分析の結果,症状では不眠(OR=3.56:95%CI=1.740−7.271),オフ症状(OR=2.44:95%CI=1.224−4.864)が服薬の自己調整に対して有意差があるリスク要因で,受療行動では医師に症状を伝えることに困る(OR=2.85:95%CI=1.136−7.131),医師に薬の考えを話さない(OR=0.34:95%CI=0.131−0.896),薬を減らしたいと考える(OR=2.33:95%CI=1.045−5.174)が有意差がある服薬の自己調整のリスク要因だった(p<0.05)。医師の専門性,治療満足度は服薬の自己調整に対して有意差があるリスク要因ではなかった。これらから,服薬を自己調整することによる有害事象から高齢患者を守るためには,不眠やオフ症状がある患者に対して症状緩和のために生活環境調整をあわせて行うことや,薬を減らしたいと考える患者や自らの考えを強く持ち治療に積極的に参加する患者に対して本人の考えや思いをより丁寧に把握していく支援が必要だと考えられた。
著者
三浦 沙織
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.107-115, 2019-07-26 (Released:2020-09-18)
参考文献数
18

本研究の目的は,健康診断で糖尿病の可能性を指摘されてから受診行動に至る促進要因と抑制要因を明らかにすることである。健康診断で糖尿病の可能性を指摘され受診した患者10名に対し,半構成的面接を行い質的に分析した。その結果,促進要因に関しては,【年齢や病気経験から自分の健康が気になる】【健康診断結果の自己評価や周囲の勧めで受診の必要性を認識する】【職場や自治体からの受診勧奨がある】【受診への制約が少ない】の4個のカテゴリーが抽出された。抑制要因に関しては,【自覚症状がなく,病気のリスクが感じられない】【要精査は自分で管理できる】【健康診断結果の意味や受診の相談先がわからない】【病院受診に抵抗感や負担感がある】の4個のカテゴリーが抽出された。このことにより,今回の対象者は「要精査」が示す受診の必要性を認識しにくい状況があり,看護職者は健康診断受診の段階から介入し,対象者に健康診断結果に対して正しく理解できるような支援の重要性が示唆された。
著者
杉本 陽子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.2-11, 2001-06-10 (Released:2017-12-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1

幼児期から思春期にある子どもが,生きること,死ぬこと,生命についてどのように認識しているのか,その発達的変化を明らかにするために,3歳〜15歳の子ども89名を対象に「生と死」に関する10項目について,聞き取り調査を実施した。結果は以下のようであった。1.第II年齢段階(6〜8歳)で死の概念の4構成成分「死の普遍性」「体の機能の停止」「死の非可逆性」「死の原因」すべてに60%以上の回答があり,死の概念の理解がほば獲得されるのはこの年代であった。2.死別体験のある子どもは第II年齢段階で50%となり,第III・第IV年齢段階(9〜11歳,12〜15歳)で80%を越えた。3.第IV年齢段階の女子3名が祖父母との死別体験から「生と死」についての深い思索をしたことを語り,自分の生きる意味や生き方を考えるきっかけとしていた。4.第III・第IV年齢段階の子どもは,「体の機能の停止」「死の非可逆性」「死後観」の回答の中で,死後の世界や魂といった霊的・精神的回答と「生まれ変わり思想」を特徴とした。特に第IV年齢段階で「生まれ変わり思想」が顕著であった。5.「生きている実感」は,うれしいとき,楽しいときといった「幸福感」と「生きていることの事実」を感じたときであった。6.「死の衝動」は第II年齢段階からみられ,理由は「人間関係に関すること」で,16名中12名が女子であった。
著者
古島 大資
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.130-137, 2015-07-31 (Released:2017-12-28)

近年,初交年齢の低下やそれに伴った10代の妊娠,人工妊娠中絶の増加が危惧されている。高校生時期における性行動は,友人,家族,学校,メディア等からの性情報に影響を受けており,とりわけインターネットはその影響力が大きいと言われている。昨今の急速な携帯電話の普及により,高校生が日常的にインターネットを通じた性情報へのアクセスや,通話やメールによる性に関する情報交換を行っている可能性が推測される。本研究の目的は,高校生における性行動と携帯電話使用との関連について明らかにすることである。平成26年7月に高校1校を対象として無記名質問紙調査を実施し回答の得られた400人(男子学生305人,女子学生95人)を解析した。性行為経験率は男子学生70人(23.1%),女子学生17人(18.7%)であった。性行為経験の有無別に分け多重ロジスティック回帰分析によりオッズ比(95%信頼区間)を算出したところ,携帯電話の所有開始時期が小学校時期であった場合は,所有開始時期が高校生であった場合と比べ7.19倍(2.27-23.88),1日平均10分以上の通話時間であった場合,10分未満と比べ7.04倍(2.16-26.60),メールの送受信回数が1日50回以上であった場合,50回未満と比べ5.00倍(2.57-10.09),インターネットを利用した性情報の検索・閲覧の経験がある場合は,ない場合と比べ3.91倍(1.97-8.13)と高くなる傾向がみられた。高校生の性行動には携帯電話使用が関連する可能性が明らかになり,携帯電話の適切な使用方法と有害なインターネット情報へのアクセス制限(フィルタリング)等を働きかけていく必要性が示唆された。
著者
菅野 眞綾 土肥 眞奈 佐々木 晶世 服部 紀子 叶谷 由佳
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.296-303, 2016

<p>本研究は,就寝前に湯たんぽを足元に設置し,寝床内と足部を局所的に加温することによる施設入所高齢者の睡眠に及ぼす影響について検討することを目的とした。介護老人福祉施設に入所中の高齢者6名を対象に就寝中の客観的睡眠状況,主観的睡眠感,核心温,寝床内温度を調査し,介入日とコントロール日で比較した。その結果,有意差はないものの介入日はコントロール日と比較し,入眠の促進,中途覚醒の減少,REM睡眠時間の延長,実質睡眠時間合計の延長があった。また,主観的睡眠感では,有意差はないものの介入日はコントロール日に比較し,睡眠時の疲労回復,起床時眠気,夢みが改善した。湯たんぽによる足元加温は施設入所高齢者の睡眠状況の改善に効果がある可能性があり,事例数や介入期間を増加して検討すること,更なる睡眠の改善のためには,安全を考慮しつつも十分に寝床内を加温する方法について検討していく必要性が示唆された。</p>
著者
藤野 裕子 樋口 裕也 藤本 裕二 立石 憲彦
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.319-327, 2019-01-31 (Released:2019-08-01)
参考文献数
35

精神科看護師のリカバリー志向性の特徴と関連要因を明らかにすることを目的として,2つの精神科病院に勤務する看護師455名を対象に自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,1)基本的属性,2)リカバリー志向性(日本語版7項目版Recovery Attitudes Questionnaire:RAQ-7),3)リカバリー知識(日本語版Recovery Knowledge Inventory:RKI),4)リカバリーの認識,5)リカバリーへの関心,6)研修姿勢,7)リカバリー研修経験,8)リカバリープロセスにある精神障害者を知っている人数,9)リカバリー概念に基づいた支援経験の有無,10)楽観性(前向きさ・気楽さの2因子で構成される楽観性尺度を使用)である。調査対象者中,有効な回答を寄せた315名(有効回答率69.2%)の回答を分析した。分析対象者は,女性が55.8%,男性が44.2%であり,年齢(平均値±標準偏差)は40.4±9.8歳,看護師経験年数は16.9±10.0年,精神科経験年数は13.1±9.1年であった。RAQ-7合計点は27.2±2.7点,項目点ごとに集計した場合は「精神の病気からのリカバリーのしかたは,人によって異なる」が4.3±0.6点で最も高く,「重い精神の病気をもつ人は誰でも,リカバリーするために励むことができる」が3.3±0.9点で最も低かった。リカバリーの認識を有していたのは198名であり,この中でリカバリー概念に基づいた支援経験者は12名(分析対象者の3.8%,認識のある者の6.1%)に過ぎなかったが,精神科専門職全般を対象とした先行研究よりもRAQ-7得点が高かったことから,患者の社会復帰を傍で支える看護師の姿勢が,リカバリー志向性の高さに繋がっていると考えられた。RAQ-7は,リカバリー支援経験者,研修に積極的な人,リカバリーに関心がある人,リカバリーに関して知らなかった人よりよく知っていた人において高かった。RAQ-7は,RKIとは関連がなく,前向きな楽観性とは弱い正の相関(r=0.194)がみられた。以上より,看護師は,回復において個別性を重視しながらも悲観的に捉えやすいため,リカバリーに関する教育が必要であると考えた。また,看護師のリカバリー志向性を高めるには,意欲的に学習に取り組む姿勢の育成,リカバリー概念の理解の推進,前向きな楽観性の考慮や実践的なプログラムを取り入れた教育が重要だと考えた。
著者
高山 直子 有吉 浩美 洲崎 好香 中村 登志子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.20-27, 2012-04-30

近年,生活習慣病の低年齢化が進み,肥満が問題となっているが,青年期の学生の身体活動量と生活習慣について実態を明らかにするために,肥満度と平均歩数および健康意識との関連について検討した。対象の年齢は15歳から22歳で,性別は男子29人,女子4人の33人であった。肥満度はBMIにて算出し,肥満,過体重,標準,やせの判定基準を用いた。歩数測定は月曜日から7日間行い,肥満度別に平日と休日の平均歩数を検討した。結果,平日の平均歩数は6691歩で,休日の平均歩数は3187歩であった。平日より休日の平均歩数が有意に少なく,いずれも健康日本21の目標数値よりも少ないことを示した。肥満度との相関では木曜日の平均歩数と相関があった。肥満・過体重の通学生と寮生の平均歩数を比較すると,寮生の平均歩数が有意に多かった。また,調査票の結果では,健康への関心が肥満・過体重学生が標準・やせ学生より関心が低いことを示したほか,間食する生活習慣が見られた。健康への認識は運動回数と,また,平均歩数が運動継続と相関のあることが明らかになった。
著者
天渕 律子 橋本 修左
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.40-46, 2002-08-10
参考文献数
5
被引用文献数
1

持別養護老人ホームで生活する高齢者の夏季の室温環境に対する温冷感やその調整への要望を把握するため高齢者45人に対して個別の面接調査を実施した。また,居室の温度,湿度などの実測値とその時点での高齢者の温冷感の申告との関係を観察した。その結果,朝方に寒いとの申告が昼や夜よりも多く,また,暑いと答えた割合は,夜間に多く見られた。高齢者は冷房による冷えと体調との関係に敏感な者が多く,特に下肢の冷えや痛みを庇って上半身の暑さを我慢する場合も見られた。高齢者の温冷感には,個々の心身の状況によって個人差が大きいことが分かった。また,冷房の送風に対して敏感である場合が多かった。