著者
柳 煌碩
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.57-71, 2018-04-30 (Released:2019-04-30)
参考文献数
24

本稿では,日本社会における規範的男性性から離れ,主夫という生き方を選択した8人の男性のライフストーリーを検討し,彼らの男性性がどのような葛藤・変容を経験し,再構築されていくのか,その過程を分析した.分析の結果,主夫たちは「日本型人事管理モデル(森口)」によって生じた諸トラブル(疾患型・非疾患型)を退職のきっかけとしていることがわかった.さらに,退職と主夫への転向を巡っては,妻の容認の仕方(全面的容認・部分的容認)が非常に重要な影響を及ぼしていること,それによって主夫たちの生き方(専業・兼業)と男性性の再構築の様相(男性性を巡る不安・主夫としての自覚)も異なっていることが明らかになった.最後に主夫への移行過程を「ヘゲモニックな男性性(R. W. コンネル)」の相対化過程として位置付け,その「相対化」の三つの側面(受動性と能動性の区別・妻が期待する男性性・日本型人事管理モデルの相対化)の重要性について考察を試みた.