著者
柳 美佐
出版者
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究会
雑誌
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究
巻号頁・発行日
no.5, pp.22-41, 2009-03-31

日本語を母語とする在日コリアン3世、4世のうち朝鮮学校で学ぶ児童は、入学して一年後には継承語である朝鮮語のみで学校生活をほぼ支障なく送れるようになっている。家庭では日本語で生活する児童が、どのような指導を通して朝鮮語で授業を理解するバイリンガルになるのかを探るため、小学校1年生の教室で参与観察を行った。観察の結果、入学直後における第二言語教授法では児童の日常に即した教科書を用いて実用的な口語表現を多くインプットしていることがわかった。また母語である日本語の助けを借りて教科内容の理解を優先し、同時に言語形式にも意識を向けるフォーカスオンフォーム(Focus on form)の指導法が用いられていた。そして教師は児童の第二言語レベルを正確に把握し、エラーに対しても適切なフィードバックを与えるなど、あらゆる場面を言語学習の機会として活用していることが確認された。