著者
宮井 恵里子 山本 格 秋山 純一 柳田 満廣
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.439-443, 1996-06-01 (Released:2011-07-12)
参考文献数
17
被引用文献数
6 4

アスコルビン酸の新規安定型誘導体であるascorbic acid 2-O-α-glucoside(AA-2G)の人工紫外線照射によるヒト皮膚色素沈着への影響を検討した。紫外線(UVA+UVB)照射後に上腕内側部の2%(w/w)AA-2G配合クリームと対照クリーム塗布部位を肉眼判定で比較したところ, AA-2Gの配合により有意な(P<0.01, by Wilcoxon matched pairs signed-ranks test)紅斑抑制効果と同時に, 有意な(P<0.05)色素沈着抑制効果を認めた。そこでAA-2Gの作用機序を詳細に検討するため, 培養細胞のメラニン合成能及び紫外線照射によるモルモット皮膚炎症に対するAA-2Gの作用を調べた。その結果マウスメラノーマ培養細胞(B16(F10))のメラニン合成は, AA-2Gにより濃度依存的に抑制された。AA-2G 2.5mMにおいてメラニン合成は約26%抑制され, 同時にDOPA反応も顕著に低下した。細胞から調製した粗酵素液によるチロシナーゼ酵素活性もAA-2Gにより抑制された。また, UVB照射モルモット背部の紅斑は0.5%, 2%(w/w)AA-2G配合吸水軟膏の外用塗布により有意に抑制され, 病理組織学的にも対照と比べて明らかな抗炎症作用が認められた。AA-2Gの紅斑抑制率は試験に供した数種のアスコルビン酸誘導体の中で最も高いものであった。これらの結果からAA-2Gは紫外線による皮膚色素沈着を抑制し, その作用機序としてメラニン合成系の直接的な抑制だけでなく皮膚炎症軽減作用の関与が強く示唆された。