著者
上田 陽彦 伊藤 奏 右梅 貴信 能見 勇人 日下 守 東 治人 柴原 伸久 勝岡 洋治
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.139-143, 2000-02-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
15

症例は82歳男性. 1997年9月頃から全身倦怠感および食欲不振が出現し, 近医で高窒素血症 (BUN49mg/dl, 血清Cr値5.3mg/dl) を指摘された. 腹部CTにて両側水腎症が存在し, 第2腰椎から第5腰椎レベルの大動脈周囲に軟部組織陰影が認められた. 逆行性腎盂撮影にて両側中部~下部尿管の著しい狭窄像を認めた. 同年10月28日, 左腎瘻造設術および後腹膜組織生検術を施行した. 病理組織学的に後腹膜線維症と診断した. ステロイド療法を行ったところ, 1か月後に左尿管の狭窄は改善された. 治療開始後6か月目に左腎瘻力テーテルを抜去可能となった. 現在BUN 25mg/dl, 血清Cr値1.3-1.4mg/dlである.本症は, 腎不全を伴った特発性後腹膜線維症と考えられたが, ステロイド療法が病変部の縮小と腎機能の改善に有効であった.