著者
山瀬 敬太郎 藤堂 千景 柴原 隆
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.265-268, 2014 (Released:2015-09-18)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

ニホンジカの高密度生息域で,森林伐採後約 10年が経過した時点で,伐採区域と未伐採区域の埋土種子相を比較した。伐採区域の種子密度は,未伐採区域 (平均 29.2個/L) と比較して,植生残存箇所 (88.1個) は高かったものの,不嗜好性のナルトサワギクが大部分を占めていた。植生が成立していない表土堆積箇所 (6.0個) や表土流出箇所 ( 1.5個) は極端に低かった。伐採区域の種数は,植生残存箇所 (平均 5.7種) や表土堆積箇所 (2.0種) ,表土流出箇所 (1.7種) とも,未伐採区域 (13.3種) より少なかった。鹿排除柵の設置箇所では植生回復がみられたものの,ニホンジカを排除せずに伐採後 10年近くが経過すると,埋土種子相は貧弱となり,植生回復が遅れる可能性が示唆された。