著者
鯉沼 広治 冨樫 一智 小西 文雄 岡田 真樹 永井 秀雄 斉藤 建 柴崎 淳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.356-360, 2004-03-25

要旨 患者は51歳,男性.便潜血反応陽性.大腸内視鏡検査にて,S状結腸に深い陥凹を有する約10mmのIIa+IIc型病変が認められた.拡大観察では,陥凹面はIIILおよびIIIs型pitで占められ,生検部位でVI pitが認められた.粘膜内病変と判断し内視鏡的粘膜切除を施行した.病理学的には高度異型腺腫を伴う高分化型腺癌で,陥凹部で粘膜下層側へ深く侵入する像が認められた.腫瘍腺管は粘膜筋板を押し下げるように発育し,先進部においても部分的に粘膜筋板が認められた.先進部周囲の間質は粘膜内のものと同様であり,desmoplastic reactionを伴っていなかった.以上より,本病変はinverted growthにより深い陥凹を示したが,本質的にはそのほとんどが粘膜内の病変と考えられた.