著者
礒部 禎夫 柴田 章夫
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1024-1030, 1993

反芻動物にフマール酸を飼料に添加して給与した場合に,第一胃内の発酵と消化機能にいかなる影響を与えるかをルーメン•カニュレ装着山羊3頭を用いて調査した.試験方法は穀類(トウモロコシ)を20%含む飼料1と,50%含む飼料2に対してフマール酸を0,2.5あるいは5%添加し,これらの飼料を6時間ごとの自動給餌法によって3週間ずつ給与した.最後の週に採食直前のルーメン内容物を採取して,6時間ごとのpH,VFAモル比を測定した.またナイロン•バッグ法によって内挿したパルプフロックの48時間における消化率を比較した.更に上記の飼料条件下のルーメン内容物の二重ガーゼ濾液100mlをO<sub>2</sub>除去-CO<sub>2</sub>ガスの通気下で嫌気培養し,酸化還元電位(Eh)が平衡に達した後にフマール酸を注入し,その後のpHとEhの変化を追跡した.ルーメンpHは飼料1及び飼料2のいずれの飼料給与においても,フマール酸の添加量を高めることによって無添加の場合よりも高まる傾向を示した.特に飼料2の給餌条件下では2.5%,5%添加群ともに有意(P<0.05およびP<0.01)に高まった.VFAの生成割合は飼料1でのフマール酸添加を2.5%から5%に高めると,酢酸,プロピオン酸のモル比が増大し,酪酸,イソ酪酸,吉草酸,カプロン酸は低下した.この変化は飼料2の給餌条件下でも見られ,フマール酸の2.5%,5%添加共に酢酸,プロピオン酸が増加し,イソ酪酸が低下した.ナイロンバッグ法によるパルプフロック消失率は飼料1の条件下で2.5%,5%添加により有意し上昇した.in vitroにおけるフマール酸代謝の様相は,Eh変動時間の推移から考察すると,ルーメン内におけるフマール酸の代謝がフマール酸の添加によって適応的に高まることを示唆した.