著者
日下部 健 岡田 利也 柴田 雅朗 武下 愛
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

Adipsin/ASP経路は補体活性化と、血中遊離脂肪酸の細胞内取り込みを交差させる複合的な生理システムである。流産の発症要因に補体系が関係することから、本経路の生殖学的な意義について検討した。流産を起こした胎盤では脂質成分の有意な上昇と血管への脂肪滴の蓄積が認められた。妊娠マウスへadipsinタンパクを投与すると流産率が増加し、胎盤に変性所見が認められた。投与によって脂質代謝関連因子と妊娠に重要なサイトカインの変動が認められた。妊娠期の主なadipsin産生部位は乳腺であることが判明し、本経路が過剰に活性化した場合、胎盤局所の傷害作用と全身性の代謝変動により流産が誘導される可能性を示した。