著者
柿崎 環
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.41-57, 2004-03

現在、内部統制とは「業務の有効性と効率性、財務報告の信頼性、関連法規の遵守という目的達成に関して合理的保証を提供することを意図した、事業体の取締役会、経営者およびその他の構成員によって遂行される一つのプロセス」とする米国のCOSO報告書による定義が、デファクト・スダンダードとされている。しかし、米国において内部統制概念は、単なる会計マターではなく、証券市場の情報開示・会計・監査を支える個々の企業のガバナンスの根幹部分としての法的側面に一貫して重大な意義があることに留意すべきである。すなわち、企業の内部統制システム構築は、証券市場の公正性確保にむけた情報開示の「質」の向上の前提条件であるとともに、経営者の対市場責任の基礎として把握され、その更なる充実が、適時開示の法的基礎をその実現手続と共に示す2002年米国企業改革法においてみてとれる。わが国においても平成14年、委員会等設置会社の取締役会が、商法施行規則において内部統制構築の基本方針を定めることを義務付けられたが、ともに証券市場を活用する公開株式会社を前提とする以上、共通の問題意識をもって内部統制の構築やその法規制のあり方を検討する必要がある。本稿においては、米国の内部統制規定をめぐる歴史的展開を踏まえて、我が国においても早急に対応が求められる商法施行規則193条等について検討し、そこに列挙された内部統制構築のための具体的項目から浮かび上がる問題点や課題について、さらには監査役設置会社における内部統制構築のあり方と委員会等設置会社の場合のその違いについて若干の考察をくわえ、最後に、我が国の内部統制に対する市場法的視点からみた法規制のあり方について言及した。