著者
日坂 ゆかり 柿田 さおり
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-8, 2020 (Released:2020-06-06)
参考文献数
16

目的:意識障害と高次脳機能障害や片麻痺のある脳出血患者の、発症直後からの意識障害や病態が回復する過程での自己の障害に対する認識の変化を明らかにした。 方法:脳出血を発症した複数の障害のある患者に対して参加観察を行い、研究対象者の言動や表情、その時の出来事、診療記録をデータとして質的記述的に分析した。 結果:対象者は50代前半の男性で、右被殻視床混合出血・脳室穿破と診断され、発症時は中等度の意識障害と高次脳機能障害や左片麻痺を認めた。参加観察は発症直後から転院までの18日間行い、意識障害の回復に伴い第1期〜第4期にデータを分類し、自己の障害の認識の変化を明らかにした。第1期は自己の障害を認識していない、第2期は自己の障害の認識はあるが一時的なものと考えている、第3 期は自己の障害による日常生活動作の困難さを認識する、第4期は自己の障害が完全には治らないことを認識する時期であった。 考察:発症時に脳出血による意識障害と片麻痺のある本症例では、発症後数日は自己の障害に対して認識がなく、 意識障害の回復に伴って自己の障害が治らないことを認識していった。中等度の意識障害のある時期は、苦痛の軽減や生理的欲求の充足を行い、記憶できなくても繰り返しの説明が重要である。意識障害の回復や病状の安定に伴い日常生活動作を拡大する訓練を行いながら、患者の自己の障害の認識に合わせた支援が重要である。