著者
笠原 秀範 田中 康史 柴田 敦 久松 恵理子 山中 あすか 冨澤 宗樹 米田 直人 北川 泰生 栗本 泰行 高橋 英樹 莇 隆
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.694-699, 2011 (Released:2012-11-07)
参考文献数
8

症例は36歳, 男性. 2008年11月ごろより, 両膝関節, 右環指関節痛が出現した. 2009年2月に起床後の右足底部痛および左上肢挙上時の疼痛があり, 当院救急外来を受診したが症状の改善はなく, 後日, 近医を受診し痛風の疑いがあると指摘され当院整形外科を受診したが, 37.5ºCの発熱, 胸痛, 左肩部痛もあり, また, 心雑音を聴取するため循環器内科を受診した. 経胸壁心エコー図検査上, 僧帽弁に疣腫を認めるため, 感染性心内膜炎の診断で入院となった. 2005年ごろから覚醒剤を使用していたが2008年10月からは使用していない. まわし打ちや, 再使用針での静注歴もある. 入院日より, セフトリアキソン(Ceftriaxone; CTRX) 2g×1回/日とゲンタマイシン(Gentamicin; GM) 60mg×3回/日の点滴投与を開始した. 入院日に施行した頭部MRIで塞栓像を認めたため, 翌日に準緊急手術を施行した. 前尖切除, 後尖温存による置換術を施行した. 術後, 僧帽弁逆流はなく, 感染は治癒した. 現在は症状の再現はなく, 覚醒剤中毒からも脱し, 社会復帰している. 近年, 覚醒剤使用がわが国でも社会的問題となっており, 覚醒剤常用者の感染症の鑑別診断として重要と考え, 症例報告をする.