著者
永井 隆 根岸 哲夫 冨沢 貴 道又 敏夫 森 昌朋
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.959-964, 1995-12-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
14
被引用文献数
2

患者は76歳の男性. 46歳時より糖尿病で当院通院していた. 71歳時より糖尿病網膜症出現.73歳時より足底部にしびれ感を自覚し, 糖尿病性神経障害と診断した. 75歳時より上腹部に腹満感を自覚したが, 胃内視鏡では表層性胃炎であり, 腹部超音波では肝, 胆, 膵に異常は認めなかった. 72歳以後のHbA1cは7.0~7.5%であった. 1994年3月22日, 歩行障害出現. 3月24日, 左不全片麻痺のため当院受診. 脳梗塞と診断した. 入院時軽度の腹部膨隆を認めた. 第4病日, 突然の嘔吐後, ショック状態となり, 腹部X線上, 胃拡張を認め, 胸部X線上, 肺炎, 肺水腫を認めた. 急性胃拡張症によるhypovolemic shock, 嚥下性肺炎, 多臓器不全を併発したと診断し加療したが改善せず, 第7病日死亡. 本例の急性胃拡張症は消化管の器質的病変によるものよりもむしろ糖尿病性神経障害による胃麻痺が基礎にあたるために生じたと思われた.