著者
根岸 睦人
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.276-295, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
41

本稿では,戦前期の主要な地方税である家屋税に注目し,1940年税制改革において,地方団体間の評価方法の統一や税率の平準化が図られた背景と改革の意義を,財政調整制度の成立との関わりにおいて明らかにしている。同改革で家屋税は還付税となり,国税として,負担の公正や均衡は国により保証される一方,税収の帰属は地方団体とされた。この背景には,脆弱な財政的基盤の上に成り立つ地方税務行政の問題への対応,財政調整制度の精緻化の要請などがあった。また本格的な財政調整制度の導入に伴い,標準的行政運営を保証する税率として標準率が導入され,政府は各団体の税率を標準率に誘導するようになった。これにより地方団体の歳入を最終的に調整する,従来の地方税の役割が大きく変化した。