著者
日下部 康明 山岡 正規 根岸 達夫
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.105-113, 1979

子殺しの3症例について報告した。第1例は26歳の主婦で, 子供の食欲のなさに対する過度の心配, 母親としての不適格感を抱いて, 子供を殺害し, 自殺を図ったが失敗した.精神医学的診断は反応性うつ病であった.第2例は32歳の男性で, 入院歴のある分裂病者であり, 再婚話と別れた妻への未練との葛藤から離婚した妻との間にできた4歳の男児を殺害し焼身自殺を図った.分裂病の再発と診断された.第3例は39歳の主婦で, 夫の不貞, 暴力, 離婚の申し出に反応して子供3人と排気ガスによる自殺を図ったが, 第3子のみ死に至った.ヒステリー人格と診断された.これら3例について, その精神異常と子殺しとの関連, その精神力動について, 若干の検討を行った.