著者
根津 直也 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2022-OS-155, no.3, pp.1-12, 2022-05-19

メモリ容量の増大や,電圧の微細化などの原因によるメモリエラーの増加に伴い,ソフトウェアにメモリエラー耐性を持たせるための手法が多く提案されている.フォールトインジェクタは擬似的にメモリエラーを発生させる事ツールであり,これらの対策手法の評価・検証に有効である.既存のフォールトインジェクタの多くはメモリ上のランダムな位置にエラーを挿入するという特徴がある.たとえば,LLFI では中間コード内のランダムに選ばれた動的命令の結果に対してエラーを挿入するため,どのデータに対してエラーが挿入されるかはランダムである.このようなランダムにエラーを挿入する手法では,特定のエラーケースを意図的に再現することが難しいと言った問題点がある.本研究では,指定したメモリオブジェクトに対して直接エラーを挿入でき,特定のエラーケースを容易に再現できるフォールトインジェクタを提案する.本フォールトインジェクタは memcached を対象として,メモリオブジェクト情報の表示,指定したメモリオブジェクトへの 2 種類のエラー挿入,エラー挿入後に検証したい処理への遷移などの機能を持つ.また,既存の耐メモリエラー機構である software-based ECC に対して,作成したフォールトインジェクタを適用する事でその有効性の検証も行った.