著者
畑山 大地 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-159, no.5, pp.1-11, 2023-05-09

ECC-uncorrectable メモリエラーはコンピュータシステムの信頼性に大きく影響するが,近年では発生頻度が増加している.オペレーティングシステム(OS)がこうしたメモリエラーに遭遇すると,OS カーネル内のデータが破壊されることで OS は継続稼働が不可能となり,それまでに処理をしていたメモリ上のデータを損失してしまう.この ECC-uncorrectable メモリエラーによる影響を特に受けるのがファイルシステムである.なぜなら,ファイルシステムはバッキングストアへのアクセスによる性能劣化を避けるために,ダーティなデータをバッキングストアに逐次書き出さずに,メモリをキャッシュとして用いて,ある程度纏めてから書き出す手法を採用しているからである.ファイルシステムにはジャーナリング機能を有する場合もあるが,これはファイルシステムとしての整合性を保つことが目的である.アプリケーションからすると,ファイル内容の整合性が保たれていない.そのため,ECC-uncorrectable メモリエラーが検知されるタイミングによってはメモリ上のダーティなデータは同期される前に消失してしまう.本論文では,OS カーネル領域において ECC-uncorrectable メモリエラーが発生した場合でもダーティなデータを失わないファイルシステムを提案する.ECC-uncorrectable メモリエラーの発生箇所がファイルシステムが使用するオブジェクト内ならば修復処理を行い,メモリ上のダーティなデータを同期させる.提案手法を Linux 5.15.54 上に実装を行い,ECC-uncorrectable メモリエラーを模したフォールト下で実験を行った.実験結果として,低いオーバヘッドでダーティなデータを書き出すことを確認した.
著者
谷本 陽祐 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-159, no.13, pp.1-15, 2023-05-09

オペレーティングシステム(OS)カーネルはシステムの根幹をなし,カーネルの障害はシステム全体に影響が及ぶ.一般的なモノリシックカーネルは単一のカーネル空間を持ち,あらゆるシステムコールは単一のメモリ空間を共有している.この問題点の一つとして,カーネル空間でメモリ破壊が発生した際に,カーネル全体に影響が伝播し,カーネルが未定義の動作を起こす可能性がある.しかしながら,現在も Linux や Windows など広く利用されているモノリシックカーネル OS において脆弱性の報告は跡を絶たず,バグ修正までの期間も要する.そこで本研究では,カーネルのメモリ破壊によるエラーの伝播の影響を小さくする手法を提案する.各システムコールが自身に許可されたメモリオブジェクトのみアクセスできるようアクセス制御を行い,不正なアクセスが生じた場合,ページフォルトを起こしてシステムコールの実行を停止させる.これによりカーネルのバグによる誤ったメモリアクセスが未然に阻止され,未定義の動作を防止することができる.本研究では単一のメモリ空間内の隔離(Isolation)に Intel MPK を用いて,提案手法を xv6 に実装し,そのすべてのシステムコールにアクセス制御を実現した.実験の結果,システムコールによる不正アクセスが生じたとき,ページフォルトが発生し実行を停止できた.また,xv6 のテストプログラムである usertests を実行したところ,全体の実行時間は従来の約 1.55 倍であった.
著者
根津 直也 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2022-OS-155, no.3, pp.1-12, 2022-05-19

メモリ容量の増大や,電圧の微細化などの原因によるメモリエラーの増加に伴い,ソフトウェアにメモリエラー耐性を持たせるための手法が多く提案されている.フォールトインジェクタは擬似的にメモリエラーを発生させる事ツールであり,これらの対策手法の評価・検証に有効である.既存のフォールトインジェクタの多くはメモリ上のランダムな位置にエラーを挿入するという特徴がある.たとえば,LLFI では中間コード内のランダムに選ばれた動的命令の結果に対してエラーを挿入するため,どのデータに対してエラーが挿入されるかはランダムである.このようなランダムにエラーを挿入する手法では,特定のエラーケースを意図的に再現することが難しいと言った問題点がある.本研究では,指定したメモリオブジェクトに対して直接エラーを挿入でき,特定のエラーケースを容易に再現できるフォールトインジェクタを提案する.本フォールトインジェクタは memcached を対象として,メモリオブジェクト情報の表示,指定したメモリオブジェクトへの 2 種類のエラー挿入,エラー挿入後に検証したい処理への遷移などの機能を持つ.また,既存の耐メモリエラー機構である software-based ECC に対して,作成したフォールトインジェクタを適用する事でその有効性の検証も行った.
著者
浅野 彰之 石田 亮 森上 裕子 大橋 朋悦 山内 裕士 山田 浩史 錦見 俊徳 小林 弘明
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.130-133, 2020-10-20 (Released:2021-10-20)
参考文献数
9

症例は50歳,男性.尿閉を主訴に当院受診.CTでは膀胱内に直径1.7cmの円形の膀胱異物を認めたため,膀胱鏡を施行.膀胱内にガラス玉を認めた.異物が球状であり,自己挿入が可能であった事から経尿道的手術を予定した.機器は軟性膀胱鏡,異物鉗子,滅菌経腟用エコープローブカバー等を用い,異物鉗子でプローブカバーの開口部をつかんだ状態で,タモ網を使用する要領でガラス玉をプローブカバー内に入れ,そのまま牽引し用手的に摘出した.術中出血はなく良好な視野のまま摘出可能であった.術後排尿は問題なく,以後一年間の外来フォローでは再発を認めていない.
著者
安藤 沙耶 日野田 卓也 藤本 順平 山田 浩史 有薗 茂樹 菅 剛 金尾 昌太郎 石藏 礼一 小林 由典 鶴田 悟
出版者
日本小児放射線学会
雑誌
日本小児放射線学会雑誌 (ISSN:09188487)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.106-112, 2021 (Released:2021-03-27)
参考文献数
17

ビガバトリンとはGABA(γ(gamma)-aminobutyric acid)アミノ基転移酵素を阻害し脳内GABA濃度を上昇させ抗てんかん作用を有する薬剤である.Vigabatrin-associated brain abnormalities on magnetic resonance imaging(VABAM)とは,ビガバトリン投与中に生じる頭部MRIでの異常を指し,淡蒼球や脳幹背側,歯状核,視床などにT2強調像・拡散強調像で高信号を認めるとされている.症例1は6か月女児.点頭てんかんに対しビガバトリンとACTH療法の併用にて治療中,フォローの頭部MRIにて両側歯状核,中脳被蓋,淡蒼球,中脳黒質にT2強調画像・拡散強調画像で高信号を認めた.症例2は6か月女児.結節性硬化症に伴う点頭てんかんの発症予防目的にビガバトリンを使用中,フォローの頭部MRIにて脳幹背側の中脳四丘体・前交連に拡散強調画像で高信号を認めた.症例1,2についていずれも関連すると思われる臨床症状については認めなかった.特徴的な画像所見を呈し,また薬剤減量や中止で改善することがVABAMの特徴であり文献的考察を交えて報告する.
著者
金津 穂 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2018-OS-144, no.3, pp.1-6, 2018-07-23

IaaS 型のクラウドプラットフォームでは仮想化技術によって計算資源を細かに制御 ・ 分配することにより,ユーザがオンデマンドに必要最小限の計算資源を借りることができる反面,仮想マシンを借りることになるためユーザが OS の管理を行なわなければならない.PaaS 型のクラウドプラットフォームではユーザが直接アプリケーションをデプロイできるため容易にエンドユーザへサービスを提供できる反面,IaaS 型ほど細かにユーザが計算資源を制御することは不可能である.また,IaaS 型と PaaS 型のどちらにおいても,既存ソフトウェア資産の活用や普及度の問題から既存の汎用 OS が使用されるものの,特定のサービスを稼動させる目的だけを考えると汎用 OS は巨大であり,不要な機能が多い.そこで,カーネル機能をライブラリとしアプリケーションとリンクし単一のプロセス空間へ配置することで,機構を簡易化しオーバヘッドを大幅に削減することによって軽量化とパフォーマンスの向上を実現した Unikerne lが存在する.Unikernel はパフォーマンスや管理の面だけではなく仮想化環境上で直接動作するためカーネルをアプリケーションへ特化させることも容易であるというメリットがある.しかし,単一のプロセス空間で動作するためマルチプロセス機能が存在しないため,POSIX API を実装したものであっても既存のプログラムへの互換性が不十分である.そこで,マルチノードへスケールすることを前提としたマルチプロセス機構を有している Unikernel,Unikernel fork を提案する.Unikernel fork は (1) アプリケーションに応じて容易にカーネルを特化させることができる,(2) マルチプロセスに対応する,(3) 既存のプログラムを改変せず利用可能である,(4) 他ノードへアプリケーション透過的に子プロセスが配置可能である,という四点を特徴とする.本稿では Unikernel fork の実現のため,まずシングルノードで複数 VM を用いてマルチプロセスに対応する Unikernel の機構の設計 ・ 実装を示し,また,今後の課題について検討を行なった.
著者
河村 裕太 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-137, no.2, pp.1-11, 2016-05-23

データセンタやクラスタ環境で仮想化技術の利用が広がっている.こうした環境では,仮想マシン (VM) を稼働させたまま異なるホスト間で移動する,VM Live Migration という技術を用いることができる.VM を退避したうえでの物理マシンのメンテナンスや,高負荷な VM を移送させて負荷分散が容易になるメリットがある.しかし,現在広く用いられている Pre-copy 方式は,メモリの全ページを転送し,変更の生じたページを逐次再送するため,VM の移送に時間がかかってしまう.また,DBMS を稼働させている VM の移送では事態が深刻化する.DBMS は大容量のデータをキャッシュし,トランザクションによるページの書き換えがあるため,ページの再送が頻発してしまう.本研究では DBMS のキャッシュのページ転送を削減し,仮想マシン移送を高速化させる手法を提案する.提案手法は DBMS のキャッシュのページ転送を省略し,共有ストレージから復元することでページ転送量を減らす.提案手法を Xen 4.4.2,Linux 3.18.20,MySQL 5.6.26 に対して実装した.読み取り専用なワークロードを実行する DBMS を稼働させている VM を移送したところ,最大で約 20%の総移送時間を削減できた.
著者
DouangchakSithixay 佐藤未来子 山田浩史 並木美太郎
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2013-OS-127, no.8, pp.1-10, 2013-11-26

本稿では,仮想化環境における省電力化を目的とし,消費エネルギー予測に基づいた省電力化を行う仮想マシンモニター (VMM) の設計,実装と評価について述べる.従来手法では,OS やアプリケーションを修正する必要があるが,本研究では VMM レイヤにおいて動的電圧・周波数制御 (DVFS) 時の仮想マシン (VM) ごとの演算性能,消費電力,ネットワーク I/O,ディスク I/O の予測に基づいた省電力制御を行うことで,VM のゲスト OS やアプリケーションに対して透過的に省電力を実現できるのが特徴である.本手法では,VM 実行時のキャッシュミス率やプロセッサ全体のメモリアクセス頻度などのハードウェアパフォーマンスカウンタの情報と仮想 NIC,仮想 I/O の情報を用いて,多変量回帰分析手法により求めた最適な演算性能,消費電力またはスループットをもとに DVFS 制御を実施する.実装には,Linux カーネルを用いた VMM である KVM を用いた.評価より,コア単位で DVFS 制御可能なマルチコア環境において,演算性能とスループットの条件の範囲内で VM が 1 台ある場合,最大でメモリバウンドベンチマークにて 38.3%,ディスクベンチマークにて 35.1%,ネットワークベンチマークにて 46.0%,VM が複数台ある場合,最大で 44.3% のプロセッサの消費エネルギーの削減率を確認した.
著者
清水 祐太郎 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-140, no.14, pp.1-11, 2017-05-09

メモリ技術の発達により,メインメモリサイズの巨大化が進んでいる.こうした主記憶が大規模な環境では TLB ミスによるレイテンシが問題となる.TLB ミスを減らす手法の一つとして,HugePage の利用が挙げられる.HugePage を利用することによって,ページテーブルの 1 エントリあたりがカバーできるアドレスの範囲が拡大し,TLB のカバレッジも同様に増加する.これまでに HugePage を利用するための手法がいくつか提案されている.しかしながら,アプリケーション自身がメモリ管理を行う場合では,いずれの手法でも十分に効率的な割り当ては行えない.本研究では,アプリケーションレベルでのメモリ管理を考慮しながら,効率的に HugePage を割り当てるための手法を提案する.今回提案する手法によって,必要とする分だけ HugePage を利用することが可能になる.本研究では,提案手法を Linux kernel 4.7.10 と memcached 1.4.31 上に実装を行った.性能評価を行い既存手法と比較した結果,実メモリ使用量のデフォルトからの増加量を 93.6% 程度削減しながら,既存手法の約 99.4% のスループットを達成した.
著者
斎藤 直人 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-138, no.1, pp.1-9, 2016-08-01

仮想化技術を利用したデータベース管理システム (DBMS) の統合が実運用されている.DBMS はトランザクションをログ先行書き込みで実現しているものが多く,ログ先行書き込みはストレージへシーケンシャルに書き込むことで高速化している.しかしながら,DBMS の統合を行うと,複数の DBMS で発生したログ書き込みが同じディスク上の各 VM イメージ内の DBMS ログファイルを往復しながら書き込まれるためシーケンシャルに書き込みを行えない.本研究では,複数 DBMS で発生したログ書き込みをハイパーバイザで制御し,シーケンシャルに行う手法を提案する.提案手法では,複数の VM の各ディスクイメージに保存されていた DBMS のログファイルを1つに統合する.そして,複数 DBMS からのログ書き込みを制御し,統合されたログファイルへシーケンシャルに書き込む.提案手法を Xen 4.2.1,MySQL 5.6.17 に実装し,4 つの DBMS で同時にワークロード TPC-C を実行した.結果,各 DBMS のスループットの平均で 23%向上し,提案手法の有効性が確認できた.
著者
山木田 和哉 山田 浩史 河野 健二
雑誌
研究報告 システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.4, pp.1-11, 2011-07-20

可用性の高いサービスを実現するために,オペレーティングシステム (OS) には高い信頼性が求められる.しかし,現在の OS 内部には多くのバグが含まれており,カーネルクラッシュの原因となっている.古くからカーネルクラッシュに対し広く用いられているリカバリ手法として,OS の再起動が挙げられる.OS 再起動はシンプルかつ強力なリカバリ手法であり,カーネルクラッシュの原因を特定せずとも,システムを復旧することができる.しかし,OS の再起動には時間を要するという問題点も存在する.これは,OS 再起動がハードウェアやカーネルの初期化など,多くの煩雑な手順を踏まなければならないためである.そこで本研究では,システム起動フェーズの再現性に着目した OS の再起動高速化手法 Phase-based Reboot を提案する.Phase-based Reboot では,OS 起動時の動作を実行フェーズ毎に分割して,システムの状態を保存する.そして,OS 再起動時に,過去の OS 起動時と同じ動作をする場合は,過去の実行フェーズを再利用することで,迅速に再起動と同等の効果を得る.また,Phase-based Reboot を Xen 3.4.1 上で稼働する Linux 2.6.18 内に実装し,評価実験を行った.実験では,既存の OS 再起動に要する時間を約 34% から 94% 削減できることを確認した.Although operating systems (OSes) are crucial to achieving high availability of computer systems, modern OSes are far from bug-free. Rebooting the OS is simple, powerful, and sometimes the only remedy for kernel failures. Once we accept reboot-based recovery as a fact of life, we should try to ensure that the downtime caused by reboots is as short as possible. Unfortunately, OS reboots involve significant downtime, which is unacceptable in commercial services. This paper presents "phase-based" reboots that shorten the downtime caused by reboot-based recovery. The key idea is to divide a boot sequence into phases. The phase-based reboot reuses a system state in the previous boot if the next boot reproduces the same state. A prototype of the phase-based reboot was implemented on Xen 3.4.1 running para-virtualized Linux 2.6.18. Experiments with the prototype show that it successfully recovered from kernel transient failures inserted by a fault injector, and its downtime was 34.3 to 93.6% shorter than that of the normal reboot-based recovery.
著者
山田 浩史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, 2009-07-15
著者
和田 健 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-158, no.9, pp.1-11, 2023-02-14

Reboot-based Recovery は,ソフトウェアの再起動によって,コンピュータシステムを不安定な状態からリカバリするためのシンプルかつ強力な方法である.Reboot-based Recovery は,Unikernel と呼ばれる新しいタイプのオペレーティングシステムへの適用という課題に直面している.Unikernel は,OS の機能がライブラリのようにアプリケーションにリンクするライブラリ OS である.アプリケーションと Unikernel が密接に結びつくために,Unikernel のみの再起動にアプリケーションの再起動を伴うことになり,Unikernel に関係のないメモリの内容を消去し,再構築してしまう.本論文では,Unikernel のみの Reboot-based Recovery を効率的に行う VampOS を紹介する.VampOS は,Unikernel コンポーネント間のインタラクションを記録し,再起動したコンポーネントにそれらを再実行させることで,リンクされたアプリケーションの実行状態を維持したまま,Unikernel のコンポーネント単位での Reboot-based Recovery を行う.ソフトウェア若化を行う最適化されていない VampOS のプロトタイプを Unikraft 0.8.0 に実装した.プロトタイプを用いた実験により,実行時のオーバヘッドは最大で 13.6 倍であるものの,意図的に挿入したメモリリークのバグの影響を僅かなダウンタイムで緩和することを示した.
著者
錦見 俊徳 小林 弘明 山田 浩史 石田 亮 山内 裕士 服部 恭介 浅野 彰之
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.120-124, 2019 (Released:2019-07-27)
参考文献数
7

【目的】ロボット支援下前立腺全摘術 (RARP) は本邦でも広く行われている. 近年では泌尿器科専門医取得前であっても一定の条件下であればRARPを施行することが可能となり, RARPで初めて前立腺全摘術を経験する術者も増えている. 初心者の場合, 膀胱頸部離断の際に前立腺に切り込んだり, 膀胱を大きく開放することがあり, また精嚢剥離の際には精嚢の同定が困難で間違った方向へ剥離を進めると直腸損傷のリスクもある. 初心者にとって比較的難しいとされる膀胱頸部離断および精嚢剥離時に術中ロボット用エコーが有用であったので報告する. 【方法】膀胱頸部離断, 精嚢剥離の操作前に術中エコー (術中用リニア探触子) を使用して部位確認を行う. 【結果】膀胱頸部離断ではエコーで尿道カテーテルや前立腺を確認し, 離断部位の同定が可能であった. 精嚢剥離の場面でもエコーで精嚢の位置を確認することで安全に剥離が可能であった. 【結論】RARP初心者にとってしばしば難関とされる膀胱頸部離断, 精嚢剥離の場面で術中ロボット用エコーの使用は有用であると考えられた. 初心者はもちろんのこと, 比較的慣れた術者であっても前立腺が膀胱に突出した症例や精嚢および精管膨大部が見つかりにくい症例において効果的であると考えられる.
著者
佐藤 克矢 山田 浩史
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS) (ISSN:2188871X)
巻号頁・発行日
vol.2017-DBS-165, no.16, pp.1-6, 2017-09-11

KVS は高性能さやスケーラビリティの確保のしやすさから多くのサービスで利用されている.KVS の構成要素として Log-Structured Merge Tree (LSM-Tree) が広く利用されている.LSM-Tree は write-intensive なワークロードに適しており,近年のアクセスパターンに適しているためである.しかし,既存の LSM-Tree では PCIe SSD ような高速な I/O デバイスを有効に活用することはできない.LSM-Tree では Disk への書き込みはコンパクションをしながら行われるが,その処理の並列性が乏しいため,高速 I/O デバイスの帯域を活用することができないためである.そこで,本論文では PCIe SSD のような高速 I/O デバイスを想定し,LSM-Tree における I/O 帯域利用の高効率化手法を提案する.本論文では,Key の範囲や DB 全体に対してロックを取得せず,関連する各レベルのコンパクションをパイプライン実行する.提案手法を RocksDB (4.10.0) をベースとして実装を行い実験,評価を行った.既存の LSM-Tree を用いた RocksDB と比較し提案手法において約 10% のスループットの向上を達成した.
著者
堀江光 浅原理人 山田浩史 河野健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2014-OS-128, no.11, pp.1-10, 2014-02-27

近年,複数のデータセンタ間を跨いで提供されるクラウド環境が登場している.これは各データセンタで稼働する計算資源を集約することで,クラウド環境の特徴である伸縮性や可用性の向上を図っている.スケーラビリティの観点から,このような多数のサーバを用いた環境での利用に適したストレージのひとつとして分散型キーバリューストアがあるが,データセンタ間を結ぶ狭帯域・高遅延なネットワークにより性能が著しく低下する問題がある.この問題を解決するために,本研究では Local-first Data Rebuilding (LDR), Multi-Layered Distributed Hash Table (ML-DHT) という 2 つの手法を用いてキーバリューストアを構築する方法を提案する.LDR は保存データに冗長性を与えた上で分割することで,ストレージ使用量の増加を抑えつつデータセンタ間通信の量を軽減する.ML-DHT はデータセンタ間通信を最小限に抑えたルーティングにより,通信遅延を抑えたデータ探索を実現する.実験により提案手法が,代表的な DHT である Chord を用いた手法を用いた場合と比較し,データ探索のための通信遅延を約 74%軽減し,ストレージ使用量とデータセンタ間通信量のバランスを柔軟に設定できることを示した.
著者
下村 剛志 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2019-OS-146, no.11, pp.1-10, 2019-05-23

メモリは外的要因によるビットフリップやモジュールの故障により保存したデータが呼び出せなくなることがある.特に In-Memory Key-Value Store(In-Memory KVS)はメモリを大量に使用するのでメモリページのエラーに遭遇する可能性が高いアプリケーションの一つである.しかし,In-Memory KVS はメモリ上に全ての key-value を展開しており,再起動にかかるコストが高い.既存研究では ECC などの誤り訂正符号を用いたエラーの回復を行っているが,広範囲に渡るメモリのエラーには対応できていない.本論文では,メモリに部分的な故障が生じたとしても,In-Memory KVS を継続して稼働可能にする手法を提案する.提案手法では OS Kernel と In-Memory KVS を連携させ,メモリページのエラー発生時に破損ページに保存されていたデータオブジェクトの回復処理を行い,動作を継続させる.本研究では Linux Kernel 4.13.9 と memcached 1.4.39 に提案手法の実装を行った.評価実験を行い,メモリエラー発生時でも約 3 秒のダウンタイムでスループットの劣化無しに動作が継続することを確認した.
著者
寺田 献 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-141, no.5, pp.1-7, 2017-07-19

オペレーティングシステム (OS) が障害を検知した際の一般的な解決方法は OS とアプリケーションプログラム (App) の再起動である.これまでに OS の不具合からプロセスコンテキストを復元したり保護したりする手法が提案されているが,これらを両立する手法は提案されていない.再起動にかかる時間はサービスを提供することができないサービスダウンタイムとなり,サービスの可用性を大きく損なう.既存の手法では OS の障害によって App の実行状態が破壊される可能性があり,OS の障害から App の保護を行うことはできていない.本論文で提案する ShadowBuddy は発生した障害から App の実行を守るために,OS が不正な操作によって App の実行状態を破壊することを防ぎ,OS から保護された領域に App の実行状態を保存する.OS による不正なページテーブル操作,OS による App のメモリ空間への不正な読み書きを防ぎ,OS 内に存在する App の実行状態を破壊したとしても再現することのできるチェックポイントを作成する.ShadowBuddy は最小で数 % のオーバヘッドで,OS 透過に App のメモリ保護を行うことができる.
著者
尾板弘崇 山田浩史 谷本輝夫 小野貴継 佐々木広
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2014-OS-130, no.21, pp.1-7, 2014-07-21

近年,クラウドサービスは,課金額に応じて必要な計算リソースを利用することができるため,設備投資をせずに大規模なデータ処理が可能となる.クラウドサービスを提供する企業 (クラウドサービスプロパイダ) はサーバに仮想マシン (VM) を使用していることが多い.一方,マルチコアプロセッサが広く普及してきており,ひとつのチップ上に搭載されるコア数は現在も増え続けている.マルチコアプロセッサを搭載したマシン上で VM を立ち上げる場合,VM に割り当てる仮想 CPU(vCPU) 数は適切に分配する必要がある.vCPU を多く与えてもアプリケーションの中には並列性が頭打ちになるものがあり,性能が上がるとは限らず,少なすぎてもアプリケーションの並列性を生かせず,性能が出ない.そのため,適切に分配しない場合,無駄な課金やマルチコアプロセッサの非効率な利用につながってしまう.本研究では,クラウド環境においてマルチコア CPU 上で動作する VM の挙動を解析し,マルチコア CPU を効率よく動作させるための VM の集約方法や仮想マシンモニタ (VMM) が提供すべき資源管理手法確率のための足がかりとする.解析は,VM に割り当てるコア数を変化させながら,クラウド環境で動作するワークロードを模したベンチマーク [1] を動作させ,ワークロードのリソース使用率を観察する.具体的には,機械学習 (Data Analytics),キーバリュー型ストレージ (Data Serving),グラフマイニング (Graph Analytics),Web 検索 (Web Search) のワークロードを動作させる.実験の結果,クラウドサービスで実行されるワークロードには,vCPU 数を増やすともにスケールするもの,ある vCPU 数まではスケールするが,それ以降は変わらない,あるいは,逆に性能が下がってしまうもの,vCPU 数にかかわらずスケールしないものがあるということが明らかになった.