著者
桃井 貞美
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.461-467, 1994-03-15

コンピュータグラフィックスによる木目の表現手法としては、実写画像をマッピングする方法と手続きにより三次元テクスチャを発生させマッピングする方法がある。後者は前者に比較してメモリ領域の節約、三次元連続性などの点で優れているが、リアリティーの向上が課題となっている。本論文では、従来よりもリアルなテクスチャを合成可能な、算術的手続きによる木目の表現方法について述ぺる。まず、木の成長過程における枝分かれを考慮に入れた骨格形状のモデルを提案し、このモデルを用いて年輪状のテクスチャを三次元的に生成する手法を示す。次に、この手法を拡張し、自然の木材で観察される、方角による年輪密度の違い、樹齢による成長速度の変化および年輪の揺らぎなどの現象を簡単なパラメータと計算式により表現可能であることを示す。本手法は、目的とする樹種の骨格的特徴や形態的特徴を表現でき、さまざまな切断面こおいて、それに対応した多様なテクスチャを合成可能である。部品数が多く実写画像を用意するのが困難な場合には、本手法は特に有用である。また、従来の手続き型手法と比較して、節の護現が簡単にできるので、唐松の小径材など節を特徴とする素材を用いた製品のシミュレーションにおいて、画像のリアリティーを向上させることができる。