- 著者
-
中根 志保
沖 淳義
薄葉 文彦
桐山 誠一
浜田 俊之
野村 文一
遠藤 真弘
- 出版者
- 公益財団法人 日本心臓財団
- 雑誌
- 心臓 (ISSN:05864488)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.4, pp.443-448, 2009 (Released:2013-05-23)
- 参考文献数
- 12
左冠動脈肺動脈起始症は先天性心奇形の0.3%を占める極めて稀な疾患である. 本症には側副血行路の発達が悪く, 無治療では生後1年以内に約90%が心筋虚血や致死的心室性不整脈などで突然死するといわれている乳児型と, 側副血行路が発達し無症状で小児期を経過し, 成人になってから発見される成人型がある. 成人型は本症の約10%を占めるとされるが, 今回, 高齢にいたるまで無症状であった本症を経験し, 稀な症例と考えられたので報告する. 症例は70歳, 女性. 労作時息切れにて当院循環器科を受診した. 心エコーでは左心房, 左室の拡大, 心収縮率の低下, 左室壁運動の低下, 僧帽弁逆流症が認められた. 冠動脈造影では, 右冠動脈は約8mmと著明に拡張し, 発達した側副血行路を介して左前下行枝が逆行性に造影された後, 主肺動脈への造影剤の流入がみられた. 以上より左冠動脈は主肺動脈より起始していることが判明し, 僧帽弁形成術, 左冠動脈主幹部移植術, 三尖弁形成術を施行し, 退院した.