著者
武 信昭 桐生 博愛
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.189-192, 1989-06-01
被引用文献数
2

75才男子, 24年間コークス炉作業に従事, 退職後15年経って右手背に腫瘤が出現した. ピッチアカントーマの臨床診断で腫瘤を切除し病理組織検査したところ, 一部に有練細胞癌の組織像が見られた. コークス炉では直接タールを扱うことはないが, 気化したタール成分に触れ, タールによる皮膚障害を起こしたと考えられる. 皮膚に付着したタールは入浴でも簡単には落ちず, 長期間にわたり発癌の危険があると考えなければならない. この症例は, 離職後もタール作業者の健康管理を続けていく必要性を示している.(1988年12月19日 受付, 1989年3月23日 受理)