著者
一ノ瀬 嘉明 松本 純一 船曵 知弘 松村 洋輔 桑原 秀次 森本 公平 西巻 博 中島 康雄 久志本 成樹 横田 順一朗
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.21-31, 2014-01-20 (Released:2014-01-20)
参考文献数
28

時間を意識した効率的な外傷全身CT評価法として外傷初期診療ガイドライン(JATEC)改訂にて取り入れられた3段階読影について解説する.第1段階では緊急の治療方針決定に重要な影響を与える損傷や病態の検出に焦点を絞った評価法(FACT)により,緊急開頭術を要する頭蓋内血腫,大動脈損傷,広範な肺挫傷,血気胸,心嚢血腫,腹腔内出血,骨盤骨折や後腹膜・傍椎体領域の血腫,上腹部実質臓器や腸間膜損傷の有無を速やかに評価する.引き続き行う第2段階では,FACTで拾い上げていない迅速な処置を要する損傷や活動性出血の検索を行う.第3段階では,患者のバイタルサインが安定した後に細かな異常所見を見落とさないよう詳細な評価を行う.これら3段階の読影により得られた画像情報と共にABCDEFGS(年齢,出血部位や性状,凝固異常,服薬歴や既往歴,経過時間,臓器損傷形態,受傷機転,意識障害の有無,循環動態)を総合的に検討して緊急性を判断し適切な治療に結びつける.