著者
田所 幸浩 山里 敬也 田中 宏哉 荒井 伸太郎 中島 康雄 平岡 真太郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J102-B, no.6, pp.445-458, 2019-06-01

確率共鳴(Stochastic resonance: SR)とは,系の雑音強度の増大に対して系の応答が向上する非線形現象のことである.従来,雑音は工学的には邪魔なものとしてフィルタ処理等を駆使して積極的に取り除かれてきた.しかし,確率共鳴では異なるアプローチをとる.すなわち,雑音を積極的に利用することで,系の応答を改善する.例えば,生態系は雑音を巧く信号処理に活かすことで,雑音に埋もれた微弱な信号であっても感知できるしくみを有している.このしくみを情報通信に応用することができれば,従来の系では感知できないような微弱な信号を用いた情報通信システムの構築が期待される.そこで本サーベイ論文では,まず確率共鳴現象についての初期の検討から現在に至る研究動向を俯瞰し,確率共鳴現象を支える基礎理論についての概説を試みる.次に,確率共鳴現象の情報通信への応用を促すため,1bit A/D変換器による多レベル信号の復調,仮説検定においても一定の条件下で信号検出確率を改善できるなど,具体的な応用例について概説し,読者の現象応用の手助けとしたい.
著者
指山 浩志 辻仲 康伸 浜畑 幸弘 松尾 恵五 堤 修 中島 康雄 高瀬 康雄 赤木 一成 新井 健広 星野 敏彦 南 有紀子 角田 祥之 北山 大祐
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.440-443, 2010 (Released:2010-07-02)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

症例は53歳の男性.工事現場のコンクリートから突出した鉄筋の上に座り受傷した.その後肛門痛があったが軽度であったため3週間放置し,症状悪化後近医を受診,外傷性直腸損傷による直腸周囲膿瘍の診断にて当院紹介入院となった.入院時は肛門痛著明で歩行困難であり,脱水状態であった.直腸指診では直腸後壁側に半周性の直腸壁欠損があり,外傷性直腸穿孔の診断で,双口式人工肛門を造設し,直腸周囲膿瘍のドレナージ術を施行した.未治療の糖尿病があり,膿瘍の改善が不良で治療に難渋したが,直腸穿孔部が閉鎖していることを確認の上,術後7カ月後人工肛門を閉鎖した.杙創性直腸穿孔は通常受傷後直ちに治療される場合が多いが,経肛門的な直腸損傷の場合,症状が乏しい場合があり,本症例のように受診が遅れることがある.受診の遅延は治療の難渋につながり,合併症の頻度を高めるため,早期の診断,治療が予後の改善には重要である.
著者
指山 浩志 辻仲 康伸 浜畑 幸弘 松尾 恵五 堤 修 中島 康雄 高瀬 康雄 赤木 一成 新井 健広 田澤 章宏 星野 敏彦 南 有紀子 角田 祥之 北山 大祐
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.466-470, 2009 (Released:2009-07-01)
参考文献数
16
被引用文献数
3 2

肛門部尖圭コンジローマ症例をHPVタイプにより分類し,疫学的,臨床的違いの有無について検討した.液相ハイブリダイゼーション法によりHPVのハイリスク型,ローリスク型の有無を調べえた166症例をHPVタイプ(ハイリスク:H ローリスク:L 陽性+ 陰性-)で分類すると,H+L+型39例,H+L-型2例,H-L+型97例,H-L-型28例であった.H+L+型は男性が多く,H-L-型は女性が多く年齢層が高いという傾向があった.居住地では,千葉北西部でH-症例,東京都内でH+症例が多く,疫学的違いがある可能性が考えられた.肉眼型では,H-L-型で散在型が多く臨床的な違いのある可能性も示唆された.HIV陽性例はH+L+型7例,H+L-型1例,H-L+型2例にみられH+症例で高率であった.術後の再発率は全体として33%であるが,HIV陽性例では67%と高く,免疫抑制状態が再発に関連すると考えられた.
著者
中島 康雄 指山 浩志 松尾 恵五 浜畑 幸弘
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.152-157, 2017-02-01 (Released:2017-02-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1

超音波検査にて診断しえた,異物による肛門周囲膿瘍を3例経験した.2例は内外肛門括約筋間に異物が穿通し肛門周囲膿瘍を形成していた.1例は坐骨直腸窩に異物が穿通し直腸周囲膿瘍を形成していた.内外肛門括約筋間に異物が穿通した2症例は肛門管と肛門皮膚に交通を認め痔瘻様の所見を呈したため,異物除去に加え痔瘻根治術を行った.異物が坐骨直腸窩に穿通していた1例は異物除去およびドレナージのみを行った.それぞれ,術後の経過は良好にて治癒した.肛門異物による肛門周囲膿瘍の報告はまれである.報告されているほとんどの症例は消化管穿孔あるいは穿通が原因であると診断されている.しかし,内外肛門括約筋間に異物が穿通した場合,痔瘻と同様の1次口を認める症例がある.その場合,痔瘻根治術も考慮する必要があり術前診断が重要であると考えられたので報告する.
著者
村上 健司 小川 普久 小林 泰之 中島 康雄
出版者
学研メディカル秀潤社
雑誌
画像診断 (ISSN:02850524)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.1062-1063, 2015-07-25

症例1 80 歳台,男性.背部痛の精査にて造影CT が施行された.
著者
村上 健司 小川 普久 小林 泰之 中島 康雄
出版者
学研メディカル秀潤社
雑誌
画像診断 (ISSN:02850524)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.1059-1061, 2015-07-25

症例1 70 歳台,男性.突然の背部痛を自覚し,救急受診.精査目的に造影CT が施行された.
著者
村上 健司 小川 普久 小林 泰之 中島 康雄
出版者
学研メディカル秀潤社
雑誌
画像診断 (ISSN:02850524)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.1056-1058, 2015-07-25

症例1 70 歳台,男性.仕事中に突然の背部痛を自覚し救急搬送.原因精査のため造影CT が施行された.
著者
松本 純一 服部 貴行 山下 寛高 濱口 真吾 森本 公平 一ノ瀬 嘉明 田島 信哉 中島 康雄 平 泰彦
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.1159-1162, 2012-11-30 (Released:2013-03-08)
参考文献数
6
被引用文献数
1

脾臓は最も多く損傷を受ける腹腔内臓器である。肝臓と同様に上腹部を占める実質臓器であるが,内部の組織構造が粗であるために,損傷し易い上に,出血しても損傷部周辺の実質による圧迫効果が弱い。現在外傷初期診療において標準的に用いられているCTは,仮性動脈瘤や造影剤の血管外漏出像といった血管損傷の所見をより短時間で,より正確に評価することを可能としている。脾損傷の治療法選択は,循環動態や他の損傷の数と程度などから総合的に判断されるが,CTがもたらす情報は大変重要である。CTで造影剤の血管外漏出や仮性動脈瘤形成といった血管損傷の所見を認めた場合には,被膜断裂がなくても肝臓より積極的に経カテーテル的動脈塞栓術を考慮する必要がある。日本外傷学会臓器損傷分類2008では,血管損傷の有無を評価に含めていないが,中島らは2007年にCT所見に基づく肝,脾臓器損傷分類を提唱している。本分類では,血管損傷の有無を加味しており,治療方針決定に際し有用なgrading systemといえる。
著者
一ノ瀬 嘉明 松本 純一 船曵 知弘 松村 洋輔 桑原 秀次 森本 公平 西巻 博 中島 康雄 久志本 成樹 横田 順一朗
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.21-31, 2014-01-20 (Released:2014-01-20)
参考文献数
28

時間を意識した効率的な外傷全身CT評価法として外傷初期診療ガイドライン(JATEC)改訂にて取り入れられた3段階読影について解説する.第1段階では緊急の治療方針決定に重要な影響を与える損傷や病態の検出に焦点を絞った評価法(FACT)により,緊急開頭術を要する頭蓋内血腫,大動脈損傷,広範な肺挫傷,血気胸,心嚢血腫,腹腔内出血,骨盤骨折や後腹膜・傍椎体領域の血腫,上腹部実質臓器や腸間膜損傷の有無を速やかに評価する.引き続き行う第2段階では,FACTで拾い上げていない迅速な処置を要する損傷や活動性出血の検索を行う.第3段階では,患者のバイタルサインが安定した後に細かな異常所見を見落とさないよう詳細な評価を行う.これら3段階の読影により得られた画像情報と共にABCDEFGS(年齢,出血部位や性状,凝固異常,服薬歴や既往歴,経過時間,臓器損傷形態,受傷機転,意識障害の有無,循環動態)を総合的に検討して緊急性を判断し適切な治療に結びつける.
著者
野島 尚武 片峰 大助 川島 健治郎 中島 康雄 今井 淳一 坂本 信 嶋田 雅暁 宮原 道明
出版者
日本熱帯医学会
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.181-193, 1978
被引用文献数
1

ケニア国タベタ地区での淡水産貝類は以下の8属11種である。即ち<I>Btomphalarta pfeifferi</I> (Krauss), <I>B.sudanica</I> (Martens), <I>Bulinus globosus</I> (Morelet), <I>B.tropicus</I> (Krauss), <I>B.forskalii</I> (Ehrenberg), 以上5種は住血吸虫との関係種, <I>Lymnea natalensis</I> (Krauss), <I>Ceratophallus natalensis</I> (Krauss), <I>Segmentorbis angustus</I> (Jickeli), <I>Gyraulus costulatus</I> (Krauss), <I>Bellamya unicolor</I> (Olivier) <I>Melanoides tuberculata</I> (M&uuml;ller) である。<BR><I>B.pfeifferi</I>はLumi川と灌漑用溝に, <I>B.sudanica</I>はJipe湖畔に, それぞれの多数の棲息をみたが, マンソン住血吸虫の自然感染は<I>B.pfeifferi</I>のみに見られた。<I>B.globosus</I>は灌漑用溝のみに多数棲息し, <I>B.tropicus</I>は灌漑用溝とJipe湖畔に, <I>B.forskalii</I>は少数ながらあらゆる水系に見出された。ビルハルツ住血吸虫の自然感染は<I>B.globosus</I>のみに見出され, その貝の棲息数が多いと約10%の高い感染率が常時認められた。<BR>一方これらの実験感染では, <I>B.pfeifferi</I>には3隻のミラシジウムで, <I>B.secdanica</I>には5隻のそれで100%感染が成立し, 両種ともマンソン住血吸虫の好適な中間宿主であることがわかった。<BR><I>B.globosus</I>は1.5~8.5mmの若い貝は5隻のミラシジウムで100%感染が成立し, 11~12mmの成貝では20隻以上のミラシジウムが必要である。ビルハルツ住血吸虫の好適な中間宿主であることがわかった。<BR>以上からタベタ地区でのマンソン住血吸虫症, ビルハルツ住血吸虫症の媒介中間宿主として, 前者には<I>B.pfeifferi</I>と<I>B.sudanica</I>が, 後者には<I>B.globosus</I>が主な役割を演じていることが推測される。
著者
塚本 増久 中島 康雄 荘 和憲
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.381-390, 1988
被引用文献数
1

人畜の日本住血吸虫症を媒介するミャイリガイOncomelania nosophora(日本), およびその近縁種0.fornosana(台湾), O.quadrasi(フィリピン)の分類については, 互に独立種またはO.hupensis(中国大陸)の亜種とみなされている. しかしこれらの3種類は形態的にもO.hupensisとはかなり異なっているので, 16種類の酵素について電気泳動像を比較した. そのうち, エステラーゼ(Est), リンゴ酸脱水素酵素(MDH), グルコース燐酸イソメラーゼ(GPI)は極めて高い酵素活性を示した. 一方, 乳酸脱水素酵素(LDH), リンゴ酸酵素(ME), キサンチン脱水素酵素(XDH), ヘキソキナーゼ(HK), アルカリ性フォスファターゼ(AIP), アスパラギン酸アミノ転移酵素(GOT)などの活性は極めて低く, 長時間インキユベートしなければ発色バンドとして検出することは困難であった. また, バンドの泳動速度はロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)が最も速く, アルコール脱水素酵素(ADH), フォスフォグルコムターゼ(PGM), 酸性フォスファターゼ(AcP), イソクエン酸脱水素酵素(IDH), GOT, HK, グルコース6燐酸脱水素酵素(G6PD), LDH, アルデヒド酸化酵素(Aldox), GPI, XDH, MDH, MEの順に遅く泳動された. なお, LDH, ME, AcP, AIP, LAP, GPIなどは1本のバンドを示したが, ADH, MDH, IDH, Aldox, HK, PGM, G6PDなどでは2・3本のバンドが, Estでは10本以上のバンドが検出された. これらのバンドの泳動像は酵素と貝の種類によってやや異なるものもあったが, 全体としては極めてよく似ており, 生化学的にも互に類縁関係が密接であることをうかがわせた.