- 著者
-
石川 陽介
桑山 健二
- 出版者
- 関西病虫害研究会
- 雑誌
- 関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, pp.47-53, 2020-05-31 (Released:2020-09-01)
- 参考文献数
- 15
Haplothrips nigricornis Bagnallは,我が国では,2019年現在,京都府,大阪府,兵庫県,和歌山県の数種のキク科雑草で発生が確認されている。本種は,詳しい生態が明らかとなっていないため,今後の研究の基礎的資料とするため,発生状況調査を実施した。大阪市において,キク科植物を対象にアザミウマ類の個体数調査及び本種の発生消長調査を実施し,併せて,本種の食性及び植物への加害性を調査するため,同地域において7科23種の植物を対象に放虫調査を実施した。調査の結果,クダアザミウマ科1属及びアザミウマ科6属が採集された。本種は最も多く採集され,ナルトサワギクから特に多く見つかった。本種の発生消長は,ナルトサワギクの開花率と連動している傾向が見られた。また,アザミウマ科の種と比較して,飛翔による移動性は高くないことが示唆された。本種は,ナルトサワギクを好適寄主としており,どのキク科植物でも繁殖できるとは限らず,主として本植物の花上で生活環を完結していると推察される。また,対象としたいずれの植物においても本種による植物への明確な加害は確認されなかった。