著者
山本 優一 石川 陽介
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.17-21, 2018-05-31 (Released:2018-09-01)
参考文献数
14
被引用文献数
10 6

2015年に大阪府内においてバラ科樹木の害虫として世界的に知られているクビアカツヤカミキリ(Aromia bungii)が発見された。そこで,2015年から2017年に大阪府域において本種の宿主であるバラ科樹木を対象に被害状況を調査した。調査地において被害木は年々増加し,いくつかの被害木はおそらく本種の加害が原因で枯死した。サクラにおいては根元周が大きな木ほど被害を受けていた。一方で,同じ被害程度のサクラを根元周別に比較すると,大きな木ほど樹勢への影響を受けにくく,小さな木ほど枯損しやすい傾向にあった。被害木の被害部位の最高地上高は,大部分の被害木が地上から 2 mより低かった。また,被害を受けてからの年数が経過した被害木ほど被害部位の最高地上高は高かった。
著者
石川 陽介 桑山 健二
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.47-53, 2020-05-31 (Released:2020-09-01)
参考文献数
15

Haplothrips nigricornis Bagnallは,我が国では,2019年現在,京都府,大阪府,兵庫県,和歌山県の数種のキク科雑草で発生が確認されている。本種は,詳しい生態が明らかとなっていないため,今後の研究の基礎的資料とするため,発生状況調査を実施した。大阪市において,キク科植物を対象にアザミウマ類の個体数調査及び本種の発生消長調査を実施し,併せて,本種の食性及び植物への加害性を調査するため,同地域において7科23種の植物を対象に放虫調査を実施した。調査の結果,クダアザミウマ科1属及びアザミウマ科6属が採集された。本種は最も多く採集され,ナルトサワギクから特に多く見つかった。本種の発生消長は,ナルトサワギクの開花率と連動している傾向が見られた。また,アザミウマ科の種と比較して,飛翔による移動性は高くないことが示唆された。本種は,ナルトサワギクを好適寄主としており,どのキク科植物でも繁殖できるとは限らず,主として本植物の花上で生活環を完結していると推察される。また,対象としたいずれの植物においても本種による植物への明確な加害は確認されなかった。
著者
石川 陽介 森下 一樹 寺島 裕雅 山城 真里子 木村 州作 片山 幸広 出田 一郎 平山 統一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101276, 2013

【はじめに】大動脈瘤に対する手術療法においてステントグラフト内挿術(endovascular aneurysm repair;以下、EVAR)は2006年7月に腹部用、2008年3月に胸部用が薬事承認となった。EVARは低侵襲の手術であり、術後リハビリテーション(以下、リハビリ)介入が必要ない場合も多く存在するという見解もある。しかし、大動脈疾患患者は虚血性心疾患患者と比較し、高齢でしかも併存症、合併症を有していることが多いという報告もある。また、我々が調べ得た範囲では本邦でのEVAR 術後のリハビリに関する報告は散見されるのみであった。当院でのEVAR術後のリハビリの現状をまとめ、理学療法介入の必要性について検討した。【方法】2011年10月1日から2012年9月30日までの間に当院にて腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm;以下、AAA)又は胸部大動脈瘤(thoracic aortic aneurysm;以下、TAA)に対するEVAR目的に入院された患者で、術後リハビリ依頼があった連続48例(男性36例、女性12例、平均年齢78.85±5.72歳)とした。当院でのEVAR術後の設定在院日数(術当日含む7日間)の1.5倍である11日以上を要した例を遅延例とし、それ以外の例を順調例とし、診療録より後方視的に検討した。【倫理的配慮、説明と同意】当院では、倫理的配慮として入院時に御本人、又はその御家族に個人情報保護に関する説明をしており、個人が特定されないことを条件として院内外へ公表することに同意を得ている。【結果】EVAR 48例中、手術部位別ではAAA38例(男性30例、女性8例、平均年齢78.66±6.15歳)、TAA10例(男性6例、女性4例、平均年齢79.60±3.53歳)であった。順調例は43例(AAA37例;平均年齢78.49±6.14歳、TAA6例;平均年齢80.33±3.45歳)であり、遅延例は5例 (AAA1例;年齢85歳、TAA4例;平均年齢78.50±3.35歳) であった。入院前ADLはBarthel Index(以下、BI)が100点を自立、95点以下をADL低下とし、順調例は自立39例(AAA33例、TAA6例)、ADL低下4例(AAA4例、TAA0例)、遅延例は自立2例(AAA1例、TAA1例)、ADL低下3例(AAA0例、TAA3例)であった。離床開始日は全体2.17±0.75日で、順調例2.07±0.25日(AAA37例;2.05±0.23日、TAA6例;2.17±0.37日)で、遅延例3.00±2.00日(AAA1例;2日、TAA4例;3.25±2.17日)であった。術後平均在院日数は全体8.96±5.08日(中央値8.00日)、順調例7.84±0.83日(中央値8.00日)、遅延例18.60±11.76日(中央値12.00日)であった。遅延理由としては、術後合併症(仮性動脈瘤、下肢虚血による大腿切断等)や転院調整によるものであった。転帰は自宅復帰39例(AAA34例、TAA5例)、転院9例(AAA4例、TAA5例)で、転院率はAAA10.5%、TAA50.0%であり、TAA患者の転院率が高かった。転院の理由としては継続加療(リハビリ)目的が2例、療養目的が7例であった。入院前ADLが低下していたAAA4例 (術後平均在院日数8.00±0.71日)の転帰は自宅復帰2例、転院2例であり遅延例は認めなかった。一方、TAA3例(術後平均在院日数22.00±14.14日)は全て遅延例であり、転院していた。【考察】EVARは低侵襲な手術であり、術後リハビリ介入が必要ない場合も多く存在するという見解もある。本研究においては特にTAAの患者で入院前ADLが低下している症例では術後在院日数の長期化や自宅復帰困難な症例を多く認めた。一方、AAAは術後順調例が多く、殆どの症例が自宅復帰可能であったが、少数の症例では入院前ADLが自立しているにも関わらず、術後在院日数が長期化する症例も存在していた。EVAR 術後におけるAAAの多く(38例中34例;89%)は自己完結型の治療が可能であるが、TAAには転院を必要とする例(10例中5例;50%)が多いため、TAAにおいては地域完結型の包括的心臓リハビリを提供する必要性があり、TAAでは術前を含めたより早期かつ密接な理学療法介入が必要であると考えられた。AAAにおいては入院前ADL状況から術後経過を予測することは困難であり、希に合併症などにより在院日数の長期化も認めるため、手術部位に関わらず理学療法介入は必要である。【理学療法学研究としての意義】EVAR術後は手術部位に関わらず、全ての症例に対してより早期かつ密接な理学療法介入によって適切なアウトカムの設定や円滑な地域完結型の包括的心臓リハビリの提供が出来る可能性が示唆された。