- 著者
-
大塚 裕之
桑山 龍
- 出版者
- 日本地質学会
- 雑誌
- 地質學雜誌 (ISSN:00167630)
- 巻号頁・発行日
- vol.106, no.6, pp.442-458, 2000-06-15
- 参考文献数
- 54
- 被引用文献数
-
1
6
本研究では, 種子島の西之表市南西部の住吉付近に小分布する形之山部層より発見されたカエル類化石の分類学的位置づけを明確にするため, 九州本土および南西諸島に現生するカエル類と本カエル化石との比較形態学的検討を行った.その結果, 本化石は寛骨や上胸骨の形態などにより, 沖縄本島と奄美大島のみに現生するイシカワガエルに同定されることが判明した.形之山部層の堆積年代は, 同部層最下部の軽石層のF.T.年代測定から1.3±0.2 Maであると推定されている.また, 琉球列島全域は, 地質学的証拠から島尻層群堆積後の鮮新世最末期から琉球層群堆積前の前期更新世にかけて大規模な陸化時期であったことが知られている.これらの事実は, イシカワガエルの祖先が形之山部層の堆積(約130万年前)前の陸化期(鮮新世最末期)に, 現在のトカラ海峡付近に存在していたと考えられる陸橋を渡って, 種子島を含む大隅諸島へ到達した可能性を示している.