著者
桑田 彰
出版者
日本財務管理学会
雑誌
年報財務管理研究 (ISSN:09171738)
巻号頁・発行日
no.24, pp.74-85, 2013-03-31

1990年以降,燃油費高騰により米大手航空会社の多くが経営破綻した。日本航空も事業費に占める燃油費の割合は急増した。燃油価格は,ケロシン価格,為替相場そして租税公課の影響を受ける。日本航空では燃油費抑制のためにヘッジを行っているが,その失敗は資金繰りを厳しいものにした。ケロシン価格と為替相場はトレードオフの関係になっており,円高は燃油費を抑制する。燃油サーチャージにおいては,ケロシン価格の変動に対して適用額の調整時間は短いが,為替相場の変動に対しては長くなっている。これが航空機燃料税の減税と共に2011年度の好業績の一因になったと考えられる。今後,ケロシン価格が上昇し,また円安が進行した場合,調達(価格)の問題と共に燃油費の価格転嫁(燃油サーチャージ)の問題が日本航空にとって大きな課題となる。