著者
桜井 好朗
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.49-59, 1985

歴史叙述は、出来事を選んでそれに歴史的意味を与える基準の設定の仕方に応じて、多様化する。近年の歴史学界における″社会史"に関しての論争は、そのことをあきらかにした。折口信夫は芸能史について独自の見解を示し、それは近代の歴史学の要求する論述の仕方には適しないと考えた。しかし歴史叙述についての既成観念を転換すれば、芸能も歴史的な意味を表現しており、歴史叙述として読むことができる。能の『三輪』をその具体的事例として、読んでみる。