著者
桜井 等至
出版者
近畿大学
雑誌
生駒経済論叢 (ISSN:13488686)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.79-107, 2005-12-15

日本経済の少子化が進行している。いよいよ2006年をピークに人口減少社会に突入する。問題は,こうした「少子人口減少社会の到来」をどう捉えるかである。少子人口減少社会に多くの問題点があるとして,それではなぜ「少子人口減少社会」が到来したのか。その要因は何か,が問われなければならない。われわれは,「少子化」が元々人々が良いと思ってその実現に努力してきた価値観(政策目標)が達成(成熟社会の実現)されて,いわばその副作用として発生してきた問題である,と捉える。それだけに,良い面を極力残しながら,悪い面の是正を目指さなければならない。この視点から,政府が行っている対策の有効性を確かめる。政府が実施している対症療法で問題は解決するものかどうか。われわれは総合経済政策論の視角からその限界を示し,根源的な解決を示す。それは,日本経済が「歴史的転換期」にあるという認識に立って,人口減少社会に則した体制改革を進めよう。すなわち,少子人口減少社会の問題解決は,総合福祉社会の形成を目指す絶好機である。