著者
山崎 秀夫 香村 一夫 森脇 洋 加田平 賢史 廣瀬 孝太郎 井上 淳
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01 (Released:2012-04-24)

福島第一原発事故で放出され首都圏に沈着した放射性セシウムは東京湾に流入、蓄積していた。東京湾堆積物中の放射性セシウムの分布を解析し、首都圏における放射性セシウム汚染の動態を解明した。本研究では、東京湾の堆積物と水の放射性セシウム濃度の時空間分布を2011年8月から2016年7月までモニタリング調査した。東京湾に流入した放射性セシウムの大部分は首都圏北東部の高濃度汚染地帯が起源であり、そこから流出して東京湾奥部の旧江戸川河口域に沈積していた。現状では,放射性セシウムは東京湾中央部まではほとんど拡散していない。東京湾奥部河口域における放射性セシウムのインベントリーは事故以来、増加し続けている。
著者
樋口 忠彦 大村 吉弘 田邊 義隆 國方 太司 加賀田 哲也 泉 惠美子 衣笠 知子 箱崎 雄子 植松 茂男 三上 明洋
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学語学教育部紀要 (ISSN:13469134)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.123-180, 2007

樋口専攻: 英語教育学, 田邊専攻: 英語教育学, 國方専攻: 英語教育学, 加賀田専攻: 英語教育学, 泉専攻: 英語教育学, 衣笠専攻: 人間形成論 英語圏の伝承唄と伝承唄遊び, 箱﨑専攻: 英語教育学, 植松専攻: 言語習得理論, 三上専攻: 英語教育学, 本論文は、日本児童英語教育学会(JASTEC)関西支部・プロジェクトチーム(代表:樋口忠彦)による研究成果である。当プロジェクトチームは平成17年7月に発足以来30回を越える研究会、小・中学校合計8校で調査を行い、本論文をまとめた。また、本論文は上記研究会での報告、協議内容に基づきメンバー全員で分担して執筆したが、執筆内容は全メンバーの考えが渾然一体となっている関係上、各執筆者の執筆箇所を示していない。なお、全体の内容構成および内容調整、用語の統一は樋口と大村、田邊が行った。
著者
樋口 寿 藤田 朋子 久保 美帆
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学農学部紀要 (ISSN:04538889)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.17-25, 2008-03
被引用文献数
2

近年、「キレる」などに代表される精神的な健康問題は、深刻な事件と結びつくものがあり、その社会的関心も高い。その原因の一つとして食生活が注目されている。過食や偏食、欠食等が身体的な健康に影響を与える因子であることから、食生活は精神的な健康にも影響を与える因子であることが推測できる。そこで本研究では、大学生の食生活や生活習慣における実態を調査し、特に精神的健康との関連について検討した。平成18年6月に近畿大学農学部1・2回生268名を対象に食物摂取頻度、生活習慣、自覚症状、食行動に関する項目について自己記入式のアンケート調査を行った。1)朝食は全体の75%が「毎日食べる」と答えたが、朝食の欠食は有意に男子で高かった。間食の頻度は女子が有意に高かった(p<0.01)。2)食物の摂取頻度では、野菜類、菓子類は女子の摂取頻度が多く、嗜好飲料、インスタント麺、ファーストフード、お酒は男子が多く、性差が認められた。女子に便秘傾向の者が多く、男子に運動習慣のある者が多かった。3)自覚症状を因子分析した結果、3つの因子が抽出され各因子を「精神的不安定」・「睡眠障害」・「身体的症状」とした。各項目で性差が認められたのは、「精神的不安定」の「自分がうつだと感じることがある」「イライラすることが多い」「頭がぼんやりする」と、「身体的症状」の「肩がこる」「疲れやすい」「目が疲れる」「目の前が真っ暗になり倒れそうになったことがある」の7項目で、いずれの項目においても女子が有意に高かった。4)食行動を因子分析した結果、3つの因子が抽出され各因子を「外発的刺激摂食」「体質認識」「食べ方」と名付けた。「外発的刺激摂食」と「体質認識」の全項目で、男子より女子が有意に高く、食べ方では男子の「早食いである」が有意に高かった。5)「精神的不安定」と関連する因子をパス解析で検討した。「精神的不安定」に直接影響を与えている因子は、自覚症状から抽出された「睡眠不足」と「身体的症状」の2因子であった。食品摂取頻度から抽出された「加工食品」と「食生活」「生活習慣」は間接的に「精神的不安定」に影響を与えていた。
著者
真鍋 幸嗣 花田 雅憲 上石 弘
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.165-169, 2000-12-25

性同一性障害患者に対して性別再判定手術(性転換手術)が正当な医療行為として国内で初めて行われたのを契機に, 近畿大学医学部附属病院精神神経科外来においても性同一性障害患者が受診するケースが増加している.今回, 我々は外来受診をした性同一性障害患者30名をMTF(male to female transsexual)とFTM(female to male transsexual)とに分類し, それぞれの臨床的特徴を検討した.個々の症例に対して, 初診時年齢, 職業, 子供の頃の遊び, 性別違和の病歴, 性的指向, 不登校の既往, 自傷または自殺企図の経験, 内分泌治療の有無, 外科的治療の有無を聴取し比較検討行った結果, 以下のことが考えられた.・MTF(1)社会適応の悪さが目立つ(2)polysurgeryの傾向がある・FTM(1)発症が比較的早期(2)性自認に揺るぎがないこういった結果を踏まえ, 性同一性障害患者の診断, 治療を行うには性差を理解した上で判断, 対応する必要があるといえる.
著者
丹羽 めぐみ 大森 秀之 人見 一彦
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.45-55, 2007-03

当院の性同一性障害専門外来に来院した青年期女性の性同一性障害の2症例について,ロールシャッハ・テストとHTPPの人物画を通して,性同一性を中心にその心理的特性を検討した.結果,2症例の共通点は1.性別の同一化が曖昧なために思春期に身体変化の衝撃を大きく受けており,身体の生々しさを受け入れられない,2.母親が同性のモデルになり難く,身近に性同一性の方向性や目標の手がかりとなる対象を見つけ難い,3.そのような性同一性が不安定な状態で性同一性障害という概念に同一化することで,精神的な安定がもたらされている.一方異なる点は,同性と異性への同一化の程度であった.
著者
森嶋 彌重 森嶋 弥重 伊藤 哲夫 古賀 妙子 近藤 宗平
出版者
近畿大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987 (Released:1987-04-01)

チェルノブイリ原発事故が発災災生し、3年を経過した。日本本土のほぼ中央に位置する琵琶湖生態圏における放射性核種の動向および経時変化について観察した。(1)琵琶湖水については、表層水1m^3を採取し、検出された放射性核種は半年後以降Cs-137のみとなり、ほぼ1/10以下で平衡行状態を示し、現在は事故以前の濃度0.2mBq/1に減少した。(2)湖泥のCs-137の深度分布は表層土より10〜20cmで最高値を示し、その濃度は粘土成分の多い所で高く、場所により2倍の変動を示した。このCs-137は、チェルノブイリ原発事故以前の放射性降下物による影響が大きいと思われる。これはチェルノブイリ事故の降下物中のCs-134/Cs-137比が1/2であるが、Cs-134の沈着が少ないことより推測される。(3)琵琶湖に生育している生物には、3年後でもCs-137が検出され、その濃度はブラックバスの肉部で0.5Bq/kgとなり、半年後の最高値2.0Bq/kgに比べ、約25%と経時的に減少している。(4)水草中のCs-137濃度は、夏に低く、冬に高い傾向を示しながら徐々に減少していく。これは冬季は枯れて芽体で越冬し、夏には生長して生物学的希釈を生じるものと思われる。(5)湖水中のCs-137濃度に対する生物中の濃度比を濃縮係数とすると、ブラックバス、モロコ、ブル-ギルは1000〜4000コイ、フナは200〜1000、貝は100〜170と低かった。原発事故などにより放出される核分裂生成物の生態圏への影響を知る上で指標生物としては濃縮係数の大きい生物が望まれるが、ブラックバスなどが有効であると思われる。
著者
太田 喜元 秋田 求
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-13, 2005-03-15

古代ギリシアの医師ヒポクラテス(BC460頃-377頃)は、医術に携わることを志す者が立てる誓いを定めた。「医術の神アポロン、アクレピオス、ヒギエイア、バナケイアおよびすべての神々に誓う、私の能力と判断に従ってこの誓いと約束を守ることを」という言葉で始まるヒポクラテスの誓い(Hippocratic oath)の中に、「私の能力と判断に従って患者に利益すると思う医術の療法を用い、悪くて有害と知る方法を決して用いない」という言葉がある。すなわち、生命はかけがえのないものであり、生命に加えるすべての行為から生じる利益は害悪を上回るものでなければならないということである。この誓いは、生命体に影響を及ぼす医術という行為にっいて、倫理的な配慮が必要であることを古代ギリシアの時代から医師という専門家が認識していたことを示すものである。現代に至り、生命の神秘さを遺伝子のレベルで解明し、更には遺伝子を取り出したり組み換えたりする技術を手にした科学者は、古代ギリシアの医師と同じように、生命体に影響を及ぼす行為がもたらす利益(善)と弊害(悪)のバランスについて真剣に考えねばならない。特に農作物は人類を養う食糧の根幹であって生命体に直接影響するがゆえに、その遺伝子組換えにっいては注意深い検討が必要である。また、例え善を目的として研究が行われたとしても、遺伝子組換え作物の是非に対する最終的な判断は、消費者が受け入れるか否かである。消費者がその是非についての判断を下すためには、正しい情報が消費者に提供されなければならない。特に、遺伝子組換え技術を用いて研究し、かつ学生を教育する立場にある者には、安全性や倫理的側面について十分に考え、学生の教育を通じて世の中に正しい情報を提供する責務がある。本論文では、遺伝子組換え作物とはどのようなものであるか、そして遺伝子組換え作物栽培の現状について簡単に述べた後に、遺伝子組換え作物に対する倫理的側面-特に安全性、そして将来に向けての展望-について考察する。
著者
長江 貞彦 富岡 洋子
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.35-45, 2004-02-28

近年,俳句は海外でも親しまれるようになり,欧米を中心に英語で詠まれる機会も増えてきた.一方,日本では昔から俳句を色紙や短冊に毛筆で書き,作品とする風習がある.そこで英語の俳句も筆文字で表現することにより,趣ある作品を作成することが可能だと考えられる.しかし,一般に英語圏の人々は筆文字に親しみがなく,実際に毛筆で文字を書くことは困難である.そこで本研究では,英語圏の人々が作成した俳句を容易に筆文字で表現するためのソフトウェアを試作した.表示する英文字には実際に筆で書かれた文字を使用し,文字間をスプライン曲線で補間することにより筆記体を表現した.補間する曲線は線幅を変えることで筆圧の変化を表現し,曲線を描画させる位置をユーザが自由に変更できるようにした.また,毛筆の特徴である"掠(かす)れ"を補間曲線上に表現していくことを可能にした.掠れは常に同じ形状で発生しないため,ランダム関数を用いて文字列を表示させるごとに違う掠れを表現した.本研究により,英文で書かれた俳句を筆文字で表現し,趣ある作品として作成することが可能となった.これにより,国境を越えた文化交流が俳句を通じて,より盛んになるものと期待できる.
著者
江川 哲雄
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.259-268, 2003-12-25

1998年8月より当院メンタルヘルス科においても性同一性障害患者を対象とした専門外来を開設した.当初より近畿圏を中心として数多くの患者が来院し,その診察・鑑別診断を進めるにあたって心理検査を施行した.今回,HTPP検査について120人(MTF56名,FTM64名)の確定診断のついた性同一性障害患者における検討を行った.特に性別に関連した反応についての分析を行い,MTF及びFTM間・中核群及び周辺群間における差異について精査した.その結果,各群間において性別反応に特定の項目について有意差が見い出され,HTPP検査の診断上における有用性,及びMTF周辺群における情緒的不安定さ,性的迎合性の低さが明らかになった.
著者
大森 秀之
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.31-37, 2007-03

近畿大学医学部附属病院メンタルヘルス科性同一性障害専門外来を受診した患者について中核群と周辺群(非中核群)に分類し,生活歴および生育歴を中心に検討した.中核群と周辺群の全体の比較では,家庭の問題,性的な問題および教育の問題で有意な差が認められた.中核群と周辺群の比較で生物学的女性では家庭の問題および性的な問題で有意な差が認められた.周辺群の生物学的男性と生物学的女性の比較では,性の問題といじめで有意な差が認められた.
著者
杉山 静征 野田 裕司 山口 真由 土井 修市 吉村 昌雄 池田 義照
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.233-237, 1980-09-25

A medicolegal autopsy report is made of a 30-year-old man who suddenly died from a spontaneous heart perforation after collision with radio lose control airplane on the chest. The perforation was located on the right ventricle, but the heart sac was intact. The cause of this death was diagnosed as so-called "cardiac tamponade".
著者
浜田 吉治郎 中山 厚生
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学健康スポーツ教育センター研究紀要 (ISSN:1349175X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-14, 2004-03-25
被引用文献数
1

テニスのシングルスにおけるプレースタイルについて、現在の基調と理想に関するプレーヤー自身の意識を把握しようと考えて調査を行い、主として次の結果を得た。1.理想のプレースタイルは、「オールラウンド-攻守量面型」で、「理想の41%が実行成就可能」という意識を持っていた。2.ゲームの中では、精神面、技術・体力面、頭脳面の順に意識が強く現れ、一流選手の条件として知的側面のトレーニングの必要性に示唆をえた。テニスのシングルスにおけるプレースタイルに関する学生男子プレーヤーの意識乃至は認識について、自身の考える理想のプレースタイル、現在の完成度、将来の実行成就の可能性などに対する意識を捉えようと考えた。今回、主として、男子学生のプレースタイルの現状および将来の実行成就度を中心に、プレーヤー自身の意識調査を行い、考察した結果を次に要約した。1.勝利のために身につけている要素と欠けている要素を通して、また、理想との比較を通して得られた結果から、勝敗のための要素は、共通して「技術面・体力面」を中核に、「精神面」が最も多く意識され、「頭脳面」の要素の意識が少ないことがわかった。2.現在のプレースタイルについては、本戦選手では「オールラウンド-攻撃型」、予選選手では「ベースライン-守備型」と、自覚しているプレーヤーが多かった。3.プレーヤー自身が考える「理想のプレースタイル」については、歴史的に仮説として考えられた「サービス・ネットプレー-攻撃型」の指向も存在するが、「オールラウンド-攻守両面型」を考えている傾向が最も強く表れた。4.「理想」に対する実行成就についての意識としては、現在の実行成就度が40%以下と考えているプレーヤーが約3分の1(37%)いるが、将来は全てのプレーヤーがそれ以上に出来ると考えている。すなわち、学生男子のプレーヤーは、全員が、将来、「理想のプレースタイル」に対して約50%以上の度合いで実行できると考え、高いレベルへの上昇を確信する意識があった。このように1学生男子のテニスプレーヤーにおいては、毎日トレーニングを行って技術レベルの高さを保ち、技術・体力を中心に精神面に対する意識の高さを保ちながら、一方では、頭脳面に対する意識はいくらか低く狭い傾向が垣間見える中で、他方では、全ての面の要素を含んだテニスのオールラウンド性に直面している様子がみられた。すなわち、オールラウンドな要素が必要な中で、低調を示す知的側面における理解とトレーニングを、さらに深く広く促進することが、特に一流選手の間に必要と読みとることが出来る。筆者は、長年にわたって、テニスの知的側面の重要性を主張してきたが、いみじくもこの傾向を通して適切さが現され、若い学生プレーヤーの課題として示唆を得た。
著者
新田 和宏
出版者
近畿大学
雑誌
Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.67-80, 2007-03-31

本稿は、日本のNGO・NPOの弱点と指摘され続けられてきたアカウンタビリティ(説明行為)とアドボカシー(政策提言)について取り上げる。アカウンタビリティとアドボカシーは、ともに外部マネジメントの範疇に入る表出行為(extension act)にあたる。また、アカウンタビリティにおける説明様式(explanation style)とアドボカシーにおける提言様式(proposal style)は、意外にも、極めて近似しており、その思考方法は通底し合っているといえる。そうすると、アカウンタビリティとアドボカシーの両者がNGO・NPOにおいて弱いのは、これは単なる偶然ではなく、必然の所産ともいえる。思うに、NGO・NPOのアカウンタビリティおよびアドボカシーの強化は、「市民社会の強化」の要諦といえるだろう。それ故に、NGO・NPOにとって、弱いと認識されているアカウンタビリティやアドボカシーを強化することは、「市民社会の強化」という点において、極めて重要な課題なのである。しかもまた、アカウンタビリティやアドボカシーは、NGO・NPOから外部へ向けて、戦略的に表出されなければ、所期の成果を期待することはできない。決して、アカウンタビリティはその説明責任を受動的に果たすものでもないし、アドボカシーは「言いたいことを言う」というような類のレベルのものではない。本稿は、NGO・NPOがアカウンタビリティおよびアドボカシーを行うにあたり、必要とされるべき戦略的な表出方法を、アカウンタビリティにおける説明様式およびアドボカシーにおける提言様式として確定するとともに、改めて、何故にNGO・NPOのアカウンタビリティやアドボカシーの強化が「市民社会の強化」に連動するのか、この重要な論点についても併せて考察することを目的とする。
著者
新田 和宏
出版者
近畿大学
雑誌
Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.51-62, 2006-03-31
被引用文献数
1

本稿は、日本における熟議民主主義の実践的な展開を、「市民会議」もしくは「市民委員会」での「ワークショップという熟議民主主義」として捉える。日本では、参加民主主義を実質的かつ制度的に保障すべき「参加の制度設計」を模索する中から、基礎自治体レベルにおいて、市民が政策形成過程に参加する「市民会議」・「市民委員会」方式が試みられてきた。その「市民会議」の内実を冷静に観察すると、そこでは「ワークショップという熟議民主主義」と呼ぶべき「日本型熟議民主主義」が展開されている。そして、本稿では、「ワークショップという熟議民主主義」を設定すべき要件とは何か、またそれを促進する要件とは何か、という問題意識に基づきながら、それらの基本要件を考察する。そのような考察から、「ワークショップという熟議民主主義」を担うファシリテーターという新しいタイプの政治的サブ・リーダーに注目する。さらに、何故に、日本では、熟議民主主義が「ワークショップという熟議民主主義」として展開してきたのか、その理由を「新しい政治文化」の出現に探る。
著者
谷口 靖弘
出版者
近畿大学
雑誌
商経学叢 (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.205-219, 2007-03-31

1997年3月,大阪市西区千代崎に完成した「大阪ドーム(現・京セラドーム大阪)」への来訪客を,「ドーム城下町」といえる大阪市西区九条商店街地域へ誘客することを目的にスタートしたのが,町おこしイベント「大阪・九条下町ツアー」であり,交通機関等を使用しない2時間余りの「ウォーキングツアー」である。当初から商店街等からは資金援助を受けずに,観光研究のフィールドワークとして主宰する筆者や地元有志が「町おこし市民運動」として立ち上げたものだ。97年4月,「九条下町ツアー」と銘打って参加者を一般募集したところ,大阪市内では珍しい町おこしツアーとして新聞・テレビ等マスコミで報道されたこともあり,30人の定員はすぐに満員となった。現在,ツアーは春と秋を中心に実施され,全国各地から修学旅行生も訪れるようになった。我々が実施している「大阪・九条下町ツアー」の対象地域である「九条地域商店街」は一般にいう「観光地」ではない。しかし,このような地域にも「観光地域活性化の5条件」が内在し,地域活性化を引き起こす潜在要素を見出すことが可能である。10年間余り催行されている「大阪・九条下町ツアー」の内容を述べる過程でこのことを実証する。併せて,ツアー参加者に対するアンケート調査の分析と旅行業法上の問題点などを考察した。