著者
伊藤 驍 桜田 良治 長谷川 武司
出版者
秋田工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

積雪寒冷地域の凍結・融解災害の地域特性を調査研究するため、平成12年度〜平成13年度に亘って行ってきた事を要約すると次のようになる。(1)先ず初年度は屋外観測用の設備購入を行う傍ら、現地における地温測定作業の測定位置を秋田県建設交通部と協議し、平成13年12月に県道沿いに観測機器を設置し、観測は平成14年2月から開始し、現在も実観測を行っている段階である。(2)道路築造計画中の路床土試料の凍結実験を行うため、凍結・融解実験装置の製作に取り組み現在室内実験を行っている。一方、小型低温環境試験機を購入し、現地から採取した試料の凍結・融解繰り返し試験にも着手した。(3)凍結・融解現象の地域的特性解明のため、全国各地の気象資料の収集を行い、その資料解析を行った。その研究成果については関連学会で発表してきた。その主な内容は以下の通りである。凍結指数は近年減少傾向にある。スペクトル分析によると札幌で11年、横手や湯沢など本州内陸部で9年程度に卓越周期がみられ、厳冬期1,2月の日最低気温の時系列解析によると、札幌、旭川など高緯度帯で温暖化現象が著しかった。最近50年間で札幌で約3℃、秋田で2.5℃、福井で1.5℃前後の上昇があったことをつきとめた。この現象は直接凍結指数の変動にも現れていた。(4)秋田北空港へのバイパス取り付け工事現場から路床土を採取し、その地盤工学的実験を行った。その結果、原試料は火山灰質でこの路床土が凍結・融解現象を起こさず融解軟弱化しない条件は、生石灰4%混入土が最適であることを見いだした。(5)2001年1,2月は各地で凍結災害・豪雪災害が報じられたが、これについて東北地方の凍結指数の分布調査を行ったところ、全般的に凍結指数が大きく、被害を裏付ける結果を得たが、特に沿岸部より山間部で大きかった。(6)凍結指数、凍結深、海抜高度間には一定の法則(対数分布則)があることが見出した。この分布則の係数は土地それぞれで異なり、いわゆる地域係数であることを見い出した。(7)凍結・融解現象のうち地盤破壊に強く関わる温度幅Tmin≦-4℃〜Tmax≧+4℃の出現率は近年低めに推移し、沿岸部では極度に少なく、温暖化現象は積雪寒冷地帯にも着実に忍び寄っていることを検証した。