- 著者
-
桝井 雅一郎
- 出版者
- 公益社団法人 日本分析化学会
- 雑誌
- 分析化学 (ISSN:05251931)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, no.8, pp.511-523, 1957-08-05 (Released:2009-06-30)
- 参考文献数
- 157
滴定分析法は分析法のなかでも簡易迅速な方法として最も広く用いられるものである.これには溶媒として水が重要な役割を果して来たが,水を用いないで種類の豊富な有機溶媒や,水以外の無機溶媒をその代りに用いることによって,滴定法の範囲が著しく拡大され,従来不可能か困難かまたは繁雑であった多くの滴定が容易に実施できるようになって来た.用いる器具類は大概の場合従来の水溶液滴定法と全く変りなく,往々電位差測定用に入力抵抗の高い装置,また大気と遮断された滴定系を必要とするが,前者は今日では大抵の研究室に常備されるガラス電極pHメーターなどで充分用が足りる.このような理由で急速にその応用が広まって来て,文献数も1940年代以後,特に1950年代になって急に増して来た.また著書や総説類も多数出てをり紹介は比較的よく行なわれている.このうち,わが国では木本氏の総説が1952年に出た後1954年に基礎分析化学講習会にて高橋氏の講座(テキスト)があり,1955年本誌に大内氏の文献紹介が出された.筆者は先に"最新の分析化学"第8集にイオノトロピーを紹介し試薬の解説を行い,1957年度薬学会年会総説講演要旨に主として薬学上の応用について紹介した.ここでは与えられた紙数がはなはだ少ないので,もっぱら日常分析法に関連したものについて,主として溶媒と終末点検知法の面からまとめてみた.従って基礎化学研究上行なわれた滴定,たとえば液体アンモニア中金属化合物の滴定などのごときは原則として含めないことにし,またそれぞれの物質については本総説によって応用は容易になると思われるし,"Analytical Chemistry"に出るReviewその他個々の文献から比較的索引しやすいので省くことにした.なお引用文献は"Chem.Listy"その他若干のものはChem.Abstr.によった.