著者
梁 婷絢
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.163, pp.32-47, 2016 (Released:2018-04-26)
参考文献数
27

本稿では,韓国人中上級日本語学習者(韓国人学習者)と日本語母語話者の作文コーパスを用いて,主節末に現れる推量のモダリティを中心に仮説条件として使用された条件表現「~と」の分析を行ない,韓国人学習者の条件表現「~と」の使用実態を明らかにすることを試みた。その結果,次のようなことが分かった。1)韓国人学習者は仮説条件「~と」の後件に推量のモダリティ,特に「と思う」を多用する傾向があるが,日本語母語話者の使用例はあまり見られない。この背景には,日本語学習者全般の「と思う」の多用傾向と「~と」を用いる文の機能に関する認識の違いがあると思われる。2)韓国人学習者が用いた仮説条件「~と」の多くは「~ば」の誤用であり,韓国人学習者は中上級レベルになっても「~と」と「~ば」を混同している。韓国人学習者の「~と」と「~ば」の混同を減らすためには,「~と」と「~ば」の前件と後件の意味的関連性の違いを理解させる必要がある。