著者
笠原 聡子 梅原 美香 吉田 正隆
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.8-13, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)
参考文献数
16

【目的】ニカルジピン塩酸塩の持続点滴治療を要する患者における静脈炎の発症要因を明らかにする。【方法】2017年5月から2018年12月にICUで末梢静脈からニカルジピン塩酸塩を持続点滴投与された患者118名(173カテーテル)について,後ろ向きに検討した。静脈炎の危険因子を多重ロジスティック回帰分析により特定し,ROC分析によりカットオフ値を求めた。【結果】静脈炎の発症率は19.7%であった。血清アルブミン値(オッズ比0.32,95%CI 0.14〜0.71, P=0.006)と投与速度の時間加重平均(オッズ比1.27,95%CI 1.10〜1.47,P=0.001)は静脈炎発症の有意な危険因子であり,投与時間(オッズ比1.02,95%CI 1.00〜1.04,P=0.057)の関連傾向もみられた。カットオフ値は,血清アルブミン値が3.3 g/dL,投与速度が4.1 mg/hr,投与時間が22.7 hrであった。【結論】血清アルブミン値が3.3 g/dL以下,投与速度が4.1 mg/hr以上,投与時間が22.7 hr以上の患者で静脈炎の発症リスクが高かった。