著者
梶 裕之
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.71-81, 2019 (Released:2019-12-11)
参考文献数
19

タンパク質糖鎖修飾は広範に生じる翻訳後修飾の1つで,プロテオミクスにおける分析対象として黎明期より大規模分析のための技術開発が進められてきた.糖鎖は多様な構造をとるうえに不均一で,インタクトな糖ペプチド解析が困難なため,はじめに糖鎖付加部位の網羅的同定(付加位置マッピング)や特定の糖鎖構造モチーフ(例えばコアやルイス型のフコシル化,LacdiNAc(GalNAc-GlcNAc)など)のキャリアタンパク質の選択的大規模同定技術が開発された.これらの技術は,疾患型糖鎖モチーフのキャリア糖タンパク質をバイオマーカーとして利用するための探索に応用された.最近はこのような糖タンパク質,特に膜タンパク質を創薬標的ととらえ,これを探索,構造検証するために,部位特異的な糖鎖解析技術の開発が進められ,応用面でも注目されている.本総合論文では,グライコプロテオミクス解析技術について,筆者の取り組みを中心に概説する.