著者
梶原 郁郎
出版者
日本教授学習心理学会
雑誌
教授学習心理学研究 (ISSN:18800718)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.66-76, 2015 (Released:2018-06-18)

本稿は,0の段のかけ算の授業内容(二時間構成)による学習援助の効果について,事前事後質問の結果を踏まえて報告している。「0×2」「0×0」と「2×0」との相違の理解をも教育目標に含めて構想した本授業内容は,「1あたりの量」の理解がかけ算の式(1あたりの量×いくつ分)理解の根幹となるという認識に基づいて,1あたり「2」「3」「8」「0」のモノを身の回りから見つけさせる発問を土台としている。これは,日常的知識であるそれらのモノ(事実)を「1あたりの量」(教科の知識)の事例に昇格させる思考を促す発問である。この発問を軸とする本授業内容は小学4年(32名)を対象に実践され,一時間目の事前質問では「4×2」の文章問題に「2×4」と正答した児童は11名(35%),二時間の事前質問では「2×0」「0×2」「0×0」の文章問題全てに正答した児童は3名(10%)であった。これらの数値が事後質問でどう変化したのかを示して,本稿は,本授業内容による学習援助の効果と課題を提示している。