著者
棚池 康信
出版者
近畿大学
雑誌
生駒経済論叢 (ISSN:13488686)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.189-207, 2006-12-20

2005年のEUは危機に直面したと一般に受け止められている。それは「安定と成長の協定」の修正やフランスとオランダにおけるEU憲法条約の批准に関する国民投票に失敗したことなど,大きな注目を集めた出来事があったからである。年末にかけては,ユーロの将来に関する不安が話題を提供することになった。しかしながら,本論文では,2005年のEUの危機を深刻にした一つの要因であるサービス指令に着目する。この指令の合意に失敗したことは,市場統合の完成以降にEUが築きあげてきた経済ガバナンスのシステム全体の機能を麻痺させるという意味合いを持っており,その意義は重要である。このような問題意識から,本論文ではEUの経済ガバナンスの構築過程を跡付け,サービス指令がその中でもっている重要性について考察しようとするものである。