著者
佐川 隆一 加藤 幸三 松田 裕昌 蔵田 親利 森 鋭和
出版者
The Japan Institute of Marine Engineering
雑誌
日本舶用機関学会誌 (ISSN:03883051)
巻号頁・発行日
vol.8, no.9, pp.697-708, 1973

近年, 舶用主機の大容量化に伴い, ボイラ燃焼室の発熱負荷は大幅に増大している.これにより加熱管の局所過熱や熱計算法の再検討等の問題が起きている.これらの問題点に関する情報を得るために, 自然循環ボイラ (蒸発量30T/H) を用いて実験を行なった.<BR>本報告は, これらの問題に大きな関連を持つ燃焼ガスのフローパターン, 炉内温度分布, 熱流束分布等の実験結果について示す.<BR>まず, 炉内フローパターンの観察を5孔ピトー管, 発煙筒等を用いて行なった結果, 以下のことが判明した.<BR>(1) フロパターンは燃焼時でも非燃焼時でもほとんど同様である. (2) 火炎形状は卵形であり, 燃焼室の形状には無関係である. (3) 火炎と底面の間の狭い領域に強い逆流が存在している. (4) 上部空間には炎がなく, ガスは停滞している.<BR>次に, 吸引式温度計を用いて炉内温度分布を測定した結果, フローパターンの計測並びに火炎形状の観察結果と良い対応を示した.最高温度は火炎のバーナ寄り約1/3の所で記録された.燃焼室出口ガス温度は計算結果と大体一致した.<BR>最後に, 手製の熱流束計を用いて熱流束の分布を測定した.本装置は全熱流束だけでなく, ふく射成分のみの分離計測も可能である.最大熱流束は火炎の中央で記録され, その値は燃焼室平均値より67~84%大きかった.その結果, 各々の水冷管の熱吸収割合にはかなり大きな差が現われた.この差異はボイラの循環や安全性に大きな影響を持っているであろう.<BR>全熱流束に対するふく射成分は2/4負荷時に約84%であった.