著者
森口 奈津美 中村 卓
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.471-479, 2013-09-15 (Released:2013-10-31)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

本研究では相分離の連続相構造に注目し,卵白連続相(C/P) ·両連続相(C||P) ·寒天連続相(P/C)の異なる3種類の連続相構造にさらに油を添加した相分離構造(o/w (C/P),o/w (C||P),o/w (P/C))とその破断特性の関係を明らかにすることを目的とした.全てのゲルにおいて,油相-水相界面には卵白の凝集ネットワークが存在していた.また,油は分散相中には存在せず,油滴として連続相中に分散相(o/w)として存在した.卵白連続相構造(o/w (C/P))では,油滴は卵白リッチ相に存在し,アクティブフィラーとして働いたため,ゲルの力学的強度が増加した.一方で,寒天連続相構造(o/w (P/C))では,油滴がインアクティブフィラーとして寒天リッチ相に存在していた.しかし,同じくインアクティブフィラーである卵白分散相も多数存在したため,破断特性において油添加による変化がなかった.また,両連続相構造(o/w (C||P))では油添加により,寒天リッチ相内に油滴を覆う卵白と寒天間のインアクティブな界面が新たに分散相として形成されたため,より脆弱なゲルになった.この様に,連続相と油滴界面の相互作用が油添加による破断特性の変化に影響することが明らかとなった.