著者
森山 仁美
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.161, pp.2-14, 2015 (Released:2017-08-26)
参考文献数
36

中国語母語話者を対象に,文脈の中で和語動詞を正確に使用できるかについて検討する。研究課題は(Ⅰ)日本語習熟度によって文脈の中で和語動詞を使用する正確さに違いがあるか,(Ⅱ)「知っている」語であるにも関わらず文脈で和語動詞の産出が正しくできなかった場合,既知語からの検索ができないためか,(Ⅲ)和語動詞産出の過程で,どのような誤用が見られるかである。調査方法として中級レベルの学習者72名を対象に2種類のテストとフォローアップ調査を実施した。調査の結果,(Ⅰ)日本語習熟度が高くなるにつれて文脈の中で和語動詞を正確に使用できる傾向にある,(Ⅱ)和語動詞に関しては理解の知識に比べ産出の知識は遅れて発達する,(Ⅲ)和語動詞産出の過程で(1)母語や意味からの連想による誤り,(2)日本語の漢語を経由した誤り,(3)弱い共起関係による誤り,(4)送り仮名が同じことであることによる誤り,(5)助詞を正しく理解できなかったことによる誤りが見られることが示唆された。