著者
森島 千都子 當目 雅代
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.49-59, 2016-03-22 (Released:2016-03-22)
参考文献数
30
被引用文献数
3 3

本研究の目的は,三次救急患者に対応する救急看護認定看護師の看護実践能力の構造を明らかにすることである.グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた分析の結果,以下のストーリーラインが見出された. 認定看護師は,危篤状態で搬送されてくる患者に対して【得られた情報から直観的に患者の成り行きを予測する】アセスメントを行っていた.このアセスメントが【先を見越した準備で緊急事態を取り仕切る】ことを可能にし,さらには【エビデンスによる緊急度と重症度から優先度を見極める】ことで,緊急事態の状況や医師の指示に振り回されることなく【医師・救急隊と共通認識を図りながら協働する】ことができ,救急対応を円滑に進行していた.また,救急対応と並行して【突然の出来事に家族を向き合わせる】ことも行っていた. このような救急対応は,【経験知の差で即応性が決まる】ため,経験が必要不可欠であり,本研究の認定看護師は,経験知を増やすことで臨機応変な対応や咄嗟の機転が効くといった実践を可能にしていた.しかし,現在の三次救急医療の現場は,【救急対応の制約とやむを得ない救命がある現場】であり,救急対応だけに専念できる状況にはない.こうした状況への対策として,実践能力を【ジェネラリストに還元することでエキスパート性を確認する】ことが,認定看護師の看護実践能力の維持につながっていた.