著者
國安 理奈子 森川 和子
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.95-103, 2006-08-20 (Released:2008-03-21)
参考文献数
19

表面の物理的構造が異なる2種類の自然礫, 泥岩と砂岩に生息する付着微生物群集について, 分離した細菌株の生理学的性質とLV-SEMによる付着状態を比較した。付着微生物群集の採取は表層部とクラック (孔隙) 深部を区分するため, 超音波処理により分画採取した。礫当たりのコロニー形成細菌数は, クラックサイズの大きい砂岩の試料で高い傾向にあった。超音波処理時間の違いによる分画毎の細菌数は, 泥岩では表層部の分画において高く, 砂岩では下層分画において高かった。分離細菌株の種類構成は泥岩・砂岩とも分画毎に異なり, 上層から順次剥離している様子がうかがえた。砂岩の下層分画の細菌株は単一種類と見られ, クラック内で増殖した可能性が考えられた。また, 砂岩の表層部と泥岩のクラック深部の種類構成が類似していることが明らかにされ, 下層分画に生息する細菌株は両礫間で異なった。LV-SEMによる礫表面の観察からも, 超音波処理による付着微生物群集の剥離のされかたは礫種により異なり, 礫に形成される付着微生物群集は基層となる礫の表面構造を反映してパイオニア微生物が規定される可能性が示唆された。