著者
内井 喜美子 川端 善一郎
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.267-272, 2009 (Released:2011-02-16)
参考文献数
22
被引用文献数
1 or 0

1998年,アメリカおよびイスラエルで大量死起こした養殖コイから初めて単離されたコイヘルペスウイルスは,2003年,日本に侵入し,コイ養殖産業に大損害を与えた。日本においては,ウイルスは養殖場にとどまらず,2004年には全国の河川や湖に蔓延し,琵琶湖では同年,10万匹以上の野生コイが死亡した。大流行の収束後は,感染を生き残ったコイがウイルスを保因し,新たなウイルスの供給源となっている可能性が高い。さらに,コイの集団繁殖生態が,ウイルスの宿主間伝播に寄与すると推測される。
著者
菊池 智子 大高 明史
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.129-138, 2014-11-19 (Released:2016-05-20)

ワカサギ杯頭条虫Proteocephalus tetrastomus (条虫綱変頭目杯頭条虫科)の分布と生活史を明らかにするために,日本各地のワカサギで寄生状況を調査するとともに,青森県小川原湖のワカサギで条虫の寄生率と発育ステージの季節変化を調べた。ワカサギ杯頭条虫は,調査した34の湖沼のうち19湖沼のワカサギで確認された。条虫の分布には地理的な偏りは見られず,湖沼の塩分特性や栄養状態との関連性もなかった。条虫の寄生数とワカサギの肥満度との間には,どの湖沼でも有意な負の関係は見られなかった。 小川原湖のワカサギに見られるワカサギ杯頭条虫は,春から夏に向かって体長が増加するとともに成熟が進行した。感染可能な幼虫を持った成熟個体は夏期を中心にして6月から12月まで見られた。一方,小型の若虫は7月に現れ,その割合は秋から冬に高まった。こうした季節変化から,ワカサギ杯頭条虫の生活史は一年を基本とし,夏から秋に世代交代が起こると推測された。
著者
Usio N 中田 和義 川井 唯史 北野 聡
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.471-482, 2007 (Released:2008-12-31)
被引用文献数
7 or 0

2006年2月1日,北米原産のシグナルザリガニPacifastacus leniusculus(ウチダザリガニ,タンカイザリガニ)が特定外来生物の第二次指定種に選定された。本報では,特定外来生物の将来的な管理計画を念頭に置き,シグナルザリガニの国内での分布と防除の現状を報告する。シグナルザリガニは,1926年から1930年にかけて北米のコロンビア川流域から輸入された後,北海道や本州の天然水域に移植され,近年,急速に北海道はもとより本州でも分布を拡大している。2007年7月現在,シグナルザリガニは,北海道の東部,北部および中央部の地域,そして本州の3県(福島県,長野県,滋賀県)に分布している。外来生物法の施行以降,これまで北海道でのみシグナルザリガニの防除が行われ,2006年度には4湖沼,2007年度には河川を含む4水域においてカゴ罠やSCUBA器具を用いた素手による防除が実施されている。一方,滋賀県今津町では,個体群独自の標準和名(タンカイザリガニ)を重んじてシグナルザリガニを保護しようとする動きがある。最後に,シグナルザリガニ防除の問題点や今後の課題について議論する。
著者
田中 吉輝 長久保 麻子 東城 幸治
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.129-146, 2010 (Released:2011-08-25)
被引用文献数
1 or 0

北米・フロリダ地方原産のフロリダマミズヨコエビは,1989年に日本(千葉-茨城県境の古利根沼:利根川の河跡湖)で初見された外来ヨコエビである。様々な環境への適応性や繁殖力が強く,現在まで,急激に分布を拡大し,日本広域に棲息している。在来の淡水ヨコエビ類が棲息しないような新しいハビタットにも侵入・定着し,また在来ヨコエビ類の棲息ハビタットへも侵入している。本研究では,在来種のオオエゾヨコエビが棲息するハビタットに外来種フロリダマミズヨコエビが侵入・定着した,長野県安曇野市の蓼川を調査地として,年間を通したそれぞれの個体群動態を調査した。同所的に棲息してはいるものの,棲み場所として利用する沈水植物種レベルでの違いが認められるなど,マイクロハビタット・レベルでのニッチ分割が認められた。また,両種が同所的に棲息することで,それぞれの繁殖時季に若干の相互作用が生じている可能性も示唆された。種間における強い排他性のある競争関係は認められなかったが,これは互いの体サイズに大きな相違があることや,蓼川においては,充分な棲み場環境や餌条件が揃っているためであると考えられる。
著者
金田 彰二 倉西 良一 石綿 進一 東城 幸治 清水 高男 平良 裕之 佐竹 潔
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.449-460, 2007 (Released:2008-12-31)
被引用文献数
5 or 5

近年,日本に侵入したと推測される外来種フロリダマミズヨコエビの文献および標本調査を行った。この結果28都府県からの出現を確認した。 Morino et al. (2004)と比較すると,関東地方において神奈川,東京で確認地点が著しく増加し,従来記録の無かった東北地方や長野県,新潟県,関西や四国でも分布が明らかとなった。フロリダマミズヨコエビと在来ヨコエビ類3科の形態の特徴を記載した。
著者
長縄 秀俊
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.585-606, 1999-12-01 (Released:2009-06-12)
被引用文献数
1 or 0

バイカル湖オリホン島の小水域から得られた大型鰓脚甲殻類(カイエビ目)の1種をBaikalolkhonia tatianae gen. et sp. nov.(バイカロルホニア・タチヤニ新属・新種)として記載した。本属は,前額部に付属器官および全鰓脚に上肢三角板をそれぞれ欠き,尾節に1対の顕著な前棘が存在する点に基づき,科Cyzicidae STEBBING,1910(カイエビ科)に属すると判断された。本属固有の主な分類学的特徴は,第1脚対を含む前寄りの鰓脚上肢上角の多数が「円筒器官」へと変形していることである。この一連の上肢付属器官の特異な体制は,カイエビ科としては全く未知のものであり,かつ異例の形質でもあるため,カイエビ科の標徴を再評価し,同科において新たに定義された2亜科(バイカルカイエビ亜科Baikalolkhoniinaeおよびカイエビ亜科Cyzicinae)を提示した。本種以外のカイエビ目として,今日までに東アジア(極東ロシア,モンゴル,中国,韓国および日本)の隣接地域からは,4科(マルカイエビ科Cyclestheriidae,カイエビ科Cyzicidae,トゲカイエビ科Leptestheriidaeおよびヒメカイエビ科Limnadiidae)に分類される7属11種が知られている。これらの分布は,4つの動物地理学的な要素によってほぼ説明され,種の多様性については,ヨーロッパのカイエビ相と同様な,緯度に伴う明確な勾配が認められた。東アジアのカイエビ類について,種レベル・タクサまでのリストと検索表を付した。
著者
田中 晋
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.47-54, 1992-01-29 (Released:2009-06-12)
被引用文献数
0 or 8

カブトミジンコDaphnia galeata Snxsは形態の変異が大きく,古くから多くの変種(variety)が記載されるなど,分類学的に混乱した状態にあったが,最近ヨーロッパにおいて,近縁のウスカワハリナガミジンコDaphnia hyalina LEYDIGと区別されるはっきりとした種であることが明らかにされた。しかしわが国では,ハリナガミジンコD.longispina O.F.MULLERまたはD.hyalinaのシノニムか亜種としてあつかわれてきており,D.galeataの分類上の位置が確定されないできた。特にD.hyalinaとは明瞭に区別されていない。本報では,D.galeataとD.hyalinaの両種が分布する湖とされてきた琵琶湖と木崎湖のDaphniaを調べたところ,出現した種はどちらもD.galeataだけであることが明らかとなった。どちらの湖とも出現したD.galeataには大きな形態の変異があり,変異は二つの湖で異なっているが,この二つの湖の標本にもとづき単為生殖雌と雄の形態の記載と若干の考察を行った。
著者
岩田 勝哉 高村 典子 李 家楽 朱 学宝 三浦 泰蔵
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.341-354, 1992-10-29 (Released:2009-06-12)

上海郊外の淀山湖湖畔にある中国綜合養魚系では,ソウギョ(Ctenopharyngodon idella)と食性の異なる他の数種のコイ科の魚を水草を主な飼料として混養し,非常に高い生産をあげている。このシステムでは,養魚池中に多量に排出されるソウギョの糞が直接,間接的に他の魚の餌として重要な役割を果たしていることが推察される。事実,この池から取り上げたフナ(Cayassius auratus)やコクレン(Aristichthys nobilis)の消化管内容物中にはソウギョの糞に由来する水草の断片が多数発見されている。本研究ではソウギョの糞が池の食物連鎖網の中でどのような役割を果たしているかを知るために,セキショウモ属の水草(中国名:苦草,Vallisneria spiralis)の砕片からなるソウギョの糞を養魚池から集め,それを実験室内で分解した。16日間の分解期間の問,糞中の炭素はほぼ一定の速度で減少し,元の含有率の約1/2にまで減少したが,窒素は分解8日後までほとんど減少しなかった。分解過程のソウギョの糞の単位乾燥重量あたりの窒素やアミノ酸含有率は分解8日後までは時間経過に伴って増加し,上限に達した。その後の含有率は分解時間の進行に関わらずほぼ一定値を示した。培養液中に加えた15NH4や3H-チミジンは速やかに分解過程の糞に取り込まれた。分解過程のソウギョの糞は細菌が繁殖するための基質として役立ち,また,付着細菌を含む分解過程の糞全体は池に共存する無脊椎動物や魚の新たな食物資源として重要な役割を果たすことが示唆された。
著者
冨川 哲夫
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.92-96, 1972-12-01 (Released:2010-11-22)

This paper deals with the seasonal variation of body length of Sinodiaptomus volkanoni KIEFER, collected from small ponds near Miki City, Hyogo Prefecture, from August, 1967 to July, 1970. With regard to its body length, two different types could be found i. e., a small-sized group occurring in the warm season (autumn) and a large-sized group in the cold season. The seasonal changes in length of the head, thorax and abdomen were also found. The maximum percentage of head length to body length was met with in the warm season and the minimum in the cold season. On the contrary, the maximum percentage of abdomen length to body length was found in the cold season and the minimum in the warm season. However, the thorax length to body length, regarding its maximum percentage, was sporadic to some extent.In the specimens collected in winter it was observed that reddish orange oil drops were deposited in the body, but, as the season progressed, they gradually decreased and entirely disappeared in summer.
著者
石綿 進一 竹門 康弘
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.11-35, 2005-04-20 (Released:2009-06-12)

日本産カゲロウ目における和名の普及と安定をはかることの意義について論じるとともに,日本産カゲロウ目の命名法的地位について概括した。各論では,日本産カゲロウ目全13科39属142種の和名を整理し,今後の標準和名として利用するためのリストを提唱した。さらに, Ishiwata(2001)のチェックリスト以後に公表された属名,種名などの変更や訂正についても,本稿に反映させ,日本産カゲロウ目のチェックリストとしても最新のものとした。
著者
川勝 正治 西野 麻知子 大高 明史
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.461-469, 2007 (Released:2008-12-31)
被引用文献数
1 or 0

日本産の扁形動物門(Plathelminthes)ウズムシ亜目(三岐腸亜目Tricladida)の淡水生三岐腸低亜目(Paludicola),陸生三岐腸低亜目(Terricola),地下水生三岐腸低亜目(Cavernicola),それにテムノケファーラ目(切頭目Temnocephalata)の動物群には,計5科・2亜科・6属・8種の外来種が知られている。これらの種類の分類表を掲げ,原産地・簡単な形態の説明と核型・分布状況を概説した。アメリカナミウズムシ・アメリカツノウズムシ(淡水産),ワタリコウガイビル・オオミスジコウガイビル(陸産)の野外定着個体群は増加しつつある。ニューギニアヤリガタリクウズムシ(陸産)は2006年に外来生物法による特定外来生物の指定を受けて,移動・飼育等が禁止された。
著者
石田 昭夫
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.349-358, 1997-12-01 (Released:2009-06-12)
被引用文献数
2 or 0

Eucyclops serrulatusとE.speratusに類似する1新種Eucyclios roseusを記載した。本種はヨーロッパからアジアに広く分布すると見られる。日本において混乱していたE.serrulatusとE.speratusの分類は本種の存在が知れたことで部分的に解決された。琉球列島から北海道までE.roseus,E.serrulatusおよびE.speratus-likespeciesが分布するが,E.speratus s.str.は出現しない。日本のsperatus-likespecies complexは幾つかのタクサに分けられ,その一つは主に日本の北半分に,他方は南半分に分布する。E.roseusとE.speratus-like species complexの日本における棲み場所は池,湖沼,河川の中・下流域で,E.serrulatusのそれは一般的に山地水体と泉流に限られる。