著者
森戸 大介
出版者
京都産業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

モヤモヤ病は日本人に多く認められる脳血管疾患で、脳底部内頸動脈分岐部における血管の狭窄・閉塞による重篤な虚血症状、および側副血管からの出血を特徴とする。一部の患者は家族性の病歴を示すことから、遺伝因子の関与が疑われてきたが、我々は初めての確実な遺伝因子として新規遺伝子ミステリンを単離した。ミステリン遺伝子は2つのAAA+ドメインとユビキチンリガーゼドメインを含む591 KDaの巨大なタンパク質をコードしていた。稀なミスセンスSNPによってミステリンC末端付近のアルギニンがリジンに替わることにより、モヤモヤ病発病率は約100~200倍程度上昇していた。これまで、ゼブラフィッシュを用いた検討により、ミステリンが生理的な血管新生・血管パターン形成に必須であることを示していたが、ミステリンの組織発現はユビキタスであり、血管以外の組織における役割が明確でなかった。今回、ゼブラフィッシュにおける広範なノックダウン、および組織特異的レスキュー実験を行ったところ、ミステリンが神経・筋発生においても必須の役割を果たしており、ミステリンのノックダウンにより顕著な運動機能低下、およびその結果として孵化障害が引き起こされることが明らかとなった。さらに、種々の変異体を用いたレスキュー実験の結果から、ミステリンが生理機能を果たすためには、AAA+ ATPアーゼ活性とユビキチンリガーゼ活性の両方が必須であることが明らかとなった。