著者
村田 治 森澤 龍也
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.227-244, 2005 (Released:2022-07-15)
参考文献数
31

本稿では,日本における財政赤字の持続可能性について理論的および実証的に考察する。本稿の分析結果によると,日本の財政赤字は持続可能ではなく,その結果,財政破綻を避けるためには,必然的にマネタリーベースの増加をともなう可能性が高い。さらに,マネタリーベースとインフレ率の関係を示した本稿のモデルからは,基礎的財政赤字や国債残高,あるいは貨幣乗数の増加はインフレやハイパーインフレをもたらす。このことは,景気の長期停滞のため,現時点ではマネタリーベースの増加がマネーサプライの増加に結びつかずインフレの発生には繋がっていないが,近い将来,景気の回復が生じる場合,財政赤字によるマネタリーベースの増加はインフレや場合によってはハイパーインフレの原因となる可能性が明らかにされたと考えられる。したがって,インフレを回避するためには,早急に基礎的財政赤字の削減が必要であると判断される。