著者
森田 規之
出版者
京都府立医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

バーグマングリアの分化過程を、S-100β遺伝子プロモーター活性の可視化によって追跡するために以下の検討を行った。分与されたマウスS-100β遺伝子の5′上流領域からプロモーター領域の欠失系列を作製し、これらをプロモーターアッセイのためのレトロウイルスベクタープラスミドであるpIP300plusにサブクローニングした。同種指向性パッケージング細胞Ψ2にトランスフェクトしてウイルス産生細胞株を樹立し、細胞培養上清から組み換えレトロウイルスを調製した。プロモーター活性の可視化のために効率の高いプロモーター領域を、S-100βを常時発現する株化細胞ラットC6グリオーマを標的として検索を試みた。しかしながらプロモーター可視化の効率が極めて低く解析に困難を伴ったことから、プラスミドの再構築、パッケージング細胞への遺伝子導入方法の変更等を行い、最終的に異種指向性のパッケージング細胞PA317を用いて組み換えウイルスを調製して、解析を可能とした。現在、明らかとなったプロモーター領域の活性を初代培養バ-クマングリアおよび小脳培養スライスで解析中である。さらに、マウス成獣の小脳において、バーグマングリアがグルココルチコイド受容体免疫陽性であることを見いだした。用いた抗血清はラットグルココルチコイド受容体cDNAからGST-fusion法によって調製した抗原蛋白質に対するものである。この抗原はグルココルチコイド受容体の転写調節ドメインの一部、マウス配列と92%のホモロジーを有する領域である。イムノブロット解析からマウスにおいても単一のバンドを与え、また、胎生14日の小脳原基において既に発現していることを明らかにした。今後、バーグマングリアの起源、分化との関連性を分子形態学的に追求する。