著者
渡邊 武 裏辻 嘉行 堀 達彦 森田 陽一
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.255-272, 1985-04-20 (Released:2010-09-28)
参考文献数
8

『金匱要略』 の土瓜根散は, 原典では, 女子は月経が月に2回ある者, 男子は陰部腫痛に局限されているが, 構成する4つの薬味の薬性薬能から考察すると, 日本人に多発する桂枝湯証に血熱と陳久淤血が加わった病像に適応するものと考えられる。方証一致の古方の観点から, 既報のとおり, 薬方をそれを構成する薬物が所属する気剤, 血剤, 水剤, 脾胃剤の4要因と寒熱の2要因を含めた6要因に分類して, レーダーグラフを作図すると, その方剤が適応する証即ち病像が図示され, 薬方の証が質的量的にやや明細に知ることができる。著者らは投与した薬方をこの要因でレーダーグラフに作図して, それに対応する疾患50症例に単方または加方, 合方で投与して, 顕著な効果をみた。それは男女の性別にかかわらず, また年令的にも幼児から老人に至るまで, 広範囲に適用される。症候別には, 筋骨格結合組織系疾患を筆頭に, 感覚器系と血液体液系疾患を除く各領域にわたっている。血症が淤血を経て乾血に至る過程を, その解除剤である駆淤血剤から考察すると, 土瓜根散は乾血発生の初期または乾血陳久淤血剤投与後の残留淤血解除剤をも兼ねるユニークな方剤として位置づけられる。