著者
森脇 丈子
出版者
日仏経営学会
雑誌
日仏経営学会誌 (ISSN:09151206)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.18-36, 2019 (Released:2019-07-22)
参考文献数
25

フランスの食品小売業界では、大規模スーパーの売上高が伸び悩む一方、大手小売業グループによるインターネット販売、そのなかでもとりわけ「ドライブ」「(drive:les drives, le driveと表記されることが多いが、本稿では‘Drive’と表記)が対前年度比での伸張に勢いが見られる。‘Drive’はインターネット注文した商品を登録している店舗に自分で取りに行く形が一般的であるため、「クリック&コレクト(click&collect)」の買い物方式の一つと考えられる。その他には、ここ数年で大都市での食品スーパーの宅配が増加している1)。この‘Drive’のように、2000年代後半以降のフランスの食品小売業界では、単一業態内部でのIT化の進展をめぐる競争が激しい。 本稿の課題は、買い物の不便さ解消の面で消費者の支持をうける‘Drive’の現状について整理すること、大手小売企業ごとに‘Drive’の設置形態や数に違いがあり、その違いが売上高の差に影響を与えていると思われることについてヒアリング調査をふまえて分析する。これらを通して、日本の流通・マーケティングの議論でほとんどとりあげられることのないフランスの食品小売業の競争の一端を示す。