- 著者
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森野 聡子
- 出版者
- 静岡大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2010-04-01
同じケルト諸語地域であっても,民衆の口承文化に民族的ルーツを求めるスコットランドやアイルランドとは対照的に,宮廷詩と写本文化を文学的規規範としたウェールズで散文説話マビノーギオンが国文学として正典化される過程を調査し,ウェールズ国文学観の変遷とその背景にある我々意識について考察した.その結果,アーサー王ロマンスに代表されるヨーロッパ文芸の祖,原ヨーロッパの神話としてマビノーギオンを定義するウェールズ知識層のアイデンティティ・ポリティクスが検証された.ローマの書記文化の洗礼を受け,イングランドとも接触の多いウェールズのナショナリズムが,他のケルト地域とは異なる表出を見たことが確認された.