著者
植木(永松) 美希
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.676-680, 2015-08

日本でもようやく放牧畜産基準認証が新しく動き出したので,本稿では,そのなかでも実際に放牧酪農牛乳認証第1号を取得した放牧パスちゃん牛乳を取り上げる。これは,動物福祉認証食品であるという点で価値があり評価できることは間違いないが,山形県酪農協同組合の子会社(株)飯豊ながめやま牧場(生産)-奥羽乳業協同組合(加工)-あいコープみやぎ・ふくしまの協同組合間提携による動物福祉に配慮した新しいフードチェーンの開発であるところにも大きな価値を見出せる。2. 株式会社飯豊ながめやま牧場 1) 牧場の概要と放牧酪農実践牧場認証の取得 飯豊ながめ山牧場は,山形県飯豊連峰の麓に位置する山形県酪農協同組合が2005年に100%出資して営業を開始した牧場である。当初はながめやま牧場と名乗っていたが,その後,飯豊市からも出資があったため,飯豊ながめやま牧場との名称になった。役員は11名,代表取締役は同山形県酪農協同組合の組合長が兼任しているほか全員が組合役員との兼任である。牧場の社員は牧場長1名他8名のスタッフで構成される。こちらは全員が非農家・酪農家出身の20代から30代の若い社員である。総面積約180haの広大な牧場であり,牛舎3棟,堆肥関連施設2棟,搾乳施設一式から構成される。
著者
植木(永松) 美希
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.855-860, 2015-10

本稿では放牧酪農牛乳認証第3号となる「よつ葉放牧生産者指定ノンホモ牛乳」を取り上げる。この牛乳は,高度経済成長期に子供達に安全安心な牛乳を飲ませたいという母親達の強い思いから始まったよつ葉牛乳の共同購入グループの運動の長年にわたる継続から誕生した牛乳である。共同購入は単なる商品購入の手段ではなく共同購入運動という日本で特に発達した消費者運動の1つの形態といえるだろう。筆者は今後の日本酪農の継続発展には消費者の酪農への理解と応援が極めて重要な鍵を握ると考えている。今回の放牧生産者指定ノンホモ牛乳は,本誌8月号で紹介した(株)飯豊ながめやま牧場とあいコープによる放牧パスちゃん牛乳と同様,酪農生産から牛乳消費までを一貫してマネジメントする新しいタイプの酪農乳業フードチェーンでもある。生産には北海道JA忠類管内の5戸の生産者が関わっている。北海道は日本の酪農の中心である。その酪農王国での取り組みという点からも注目できる事例であろう。認証取得第2号は同じく北海道内の個人酪農家である。個人の場合,放牧や放牧認証を活用した多様な経営の展開が実践されているので,また別の機会に是非取り上げたいと考えている。もちろん放牧を実践しながら認証を取得していない酪農家も多く存在するが,今後の日本の酪農経営の発展と多様性を考える上では,認証取得は大きな選択肢の1つとなるであろう。