- 著者
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栗山 千亜紀
植田 喜一郎
荒川 健司
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.146, no.6, pp.332-341, 2015 (Released:2015-12-10)
- 参考文献数
- 25
- 被引用文献数
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カナグリフロジン水和物(以下カナグリフロジン,製品名:カナグル®錠(国内),Invokana®錠(海外))は,2型糖尿病治療薬として2013年3月に米国で初めて承認されたナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬である.2014年7月には,国内でも承認を取得した.1990年,田辺三菱製薬は世界に先駆け,尿糖排泄促進による経口糖尿病治療薬の創薬研究に着手し,経口投与でSGLTを阻害するT-1095の創製に成功した.さらに治療薬としてより適した化合物を探究し,誕生したのがカナグリフロジンである.カナグリフロジンは,腎近位尿細管において糸球体ろ過された大部分のグルコースの再吸収を担うSGLT2を選択的かつ競合的に阻害し(SGLT1とのIC50値の比は158倍),血中の過剰なグルコースを尿糖として排泄することでインスリン非依存的に糖尿病モデル動物の高血糖を是正する.肥満モデル動物においては,体重および体脂肪増加を抑制する効果を認めた.Zucker diabetic fatty(ZDF)ラットにカナグリフロジンを反復投与することで,持続的に血糖値を低下し,インスリン分泌能の改善および膵β細胞量の維持をもたらした.また,カナグリフロジンとDPP-4阻害薬テネリグリプチンとの併用投与,およびラットでの消化管内糖質量に関する検討から,小腸SGLT1阻害を介した糖質吸収遅延作用を有することも示された.2型糖尿病患者を対象とした国内外の臨床試験において,カナグリフロジンは持続的なヘモグロビンA1c(HbA1c)改善,体重および血圧低下,eGFRの低下抑制効果等を示しており,実施中のグローバル大規模臨床試験(CANVAS,CREDENCE)の結果にも大いに期待がもたれている.